認知症初期の高齢者とコミュニケーションを取る5つのポイント

身近な高齢者が認知症になったとき、周囲の人は戸惑い、どう対応すれば良いのかわからない場合があります。認知症になっても、会話の仕方を工夫したり、環境を整えたりすることで、コミュニケーションが取れます。適切なコミュニケーションによって認知症の進行がゆっくりになる可能性もあるため、認知症高齢者とのかかわり方は大切です。当記事では、認知症の初期症状がある高齢者との会話について押さえるべきポイントや、コミュニケーションが認知症に与える影響について解説します。

 

1 もしかして認知症?初期症状を解説

高齢者の認知症が発症していることに気付くのは、家族など身近な人が多い傾向です。ここからは、身近な人が気付きやすい認知症のサインについて紹介します。

 

1-1 身近な人が気付く認知症のサイン

物忘れ・判断力や理解力の低下・落ち込んでいる様子・見当識障害の4つは、認知症のサインとして代表的なものです。以下で、それぞれの症状について事例を紹介します。

物忘れ

  • 同じ話を繰り返す
  • 数時間前のことを忘れる
  • 頻繁に物をなくす・忘れる

判断力や理解力の低下

  • 家族の会話についていけない
  • テレビを見なくなる
  • 買い物のときにお金の計算ができない
  • 青信号に変わっても横断歩道で止まっている

落ち込んでいる様子

  • 集中力の低下がみられる
  • 家に引きこもりがちになった
  • 外出を億劫がる
  • 身だしなみを整えない

見当識障害

  • 季節や昼と夜などがわからない
  • すぐ道に迷う
  • 昔のことを昨日の出来事と勘違いしている
  • 話のつじつまが合わない

上記の症状は認知症の方にみられる一方で、たんなる物忘れや、高齢者にみられるうつ、聴力の低下といった可能性もあります。認知症なのか老化現象なのか、正しく判断するためには、医師の診断が必要です。

 

1-2 認知症と物忘れの違い

認知症による物忘れと、加齢による物忘れには、症状に違いがあると言われています。以下は、認知症なのか加齢による物忘れなのか、両者の違いをまとめた表です。

認知症による物忘れ加齢による物忘れ
原因アルツハイマー病・脳血管疾患

などの病気

加齢によって脳細胞に萎縮や変性

が起こる老化現象

症状出来事の全部を忘れる出来事の一部を忘れる
事例食事を摂ったことを覚えていない食事のメニューが思い出せない

認知症による物忘れは、出来事や言動そのものを丸ごと忘れる傾向です。一方で、加齢による物忘れは、出来事自体は覚えていても一部の名前や状態を忘れています。例えば、認知症のケースでは、行動したことや会話したこと自体を忘れています。加齢による物忘れは、会話したことは覚えていても話題にした俳優の名前を忘れてしまった、といった症状です。

 

1-3 認知症に気付いたら早期の対応が大切

「認知症かな?」と気付いたときは、対応の早さが認知症の進行に影響を及ぼします。早期に受診すれば、その人に合った治療法も見つかりやすく、認知症の進行をゆっくりにできる可能性があります。認知症について受診したいときは、専門医やかかりつけ医がおすすめです。

受診に拒否感のある高齢者の場合、「たまには健康診断に行ってみない?」という誘い方や、高齢福祉・介護の専門機関に相談する方法もあります。高齢福祉・介護の専門機関には、高齢者の相談全般を受け付けている地域包括支援センターがあります。介護保険サービスを利用している場合は、ケアマネジャーも相談先として適切です。早期に高齢福祉・介護の専門機関へ結びつけることができれば、介護サービスなどの利用により、家族の負担も軽くなります。

 

2 認知症高齢者と上手なコミュニケーションを取る5つのポイント

認知症の症状がある方でも、配慮すべきポイントを押さえれば、コミュニケーションがうまくいく可能性が高まります。ここから紹介するのは、認知症高齢者とコミュニケーションを取る5つのコツです。

  • 相手のペースに合わせる
  • 短い文章で話す
  • 話しやすい話題を選ぶ
  • 自尊心を傷つける態度を取らない
  • コミュニケーションを取る環境に配慮する

 

2-1 相手のペースに合わせる

会話は、相手のペースに合わせて進めることが大切です。早口や高い声は聞き取りにくいため、落ち着いた雰囲気で会話を進めましょう。必要に応じてジェスチャーなどの非言語コミュニケーションを取り入れると、伝わりやすい場合もあります。

認知症高齢者との会話で大切なのは、話の内容よりも、気持ちに寄り添う姿勢です。つじつまの合わないことでも否定せずに聞き、共感の姿勢を示しましょう。話しているうちに認知症の方が疲れたときは、話題を変える、いったん会話をやめにする、といった方法を取ります。相手のペースに合わせたコミュニケーションがおすすめです。

 

2-2 短い文章で話す

認知症になると、周りのスピードが早く感じたり、長文の理解が難しくなったりします。会話のときは、わかりやすい言葉を使い、短い文章で話すと伝わりやすいでしょう。例えば、「昼食の後片付けが終わったら散歩に行きませんか」という質問は、時系列がわかりにくい文章です。行動のたびに「昼食を食べましょう」「片付けますね」「散歩に行きませんか」と、短い文章で尋ねたほうが、認知症の方にとって理解しやすい質問です。

 

2-3 話しやすい話題を選ぶ

認知症の方でも話しやすい話題ならば、うまくコミュニケーションが取れます。おすすめの話題は、高齢者が昔から得意にしていることや、過去の出来事、思い出話です。認知症の特徴として、最近の出来事は覚えていられない一方で、昔の記憶は残っていることが挙げられます。例えば、過去に行った家族旅行の話、昔飼っていた動物、料理好きの方ならレシピの話など、話しやすい話題ならば楽しい雰囲気でコミュニケーションを取れるでしょう。

なお、認知症へのアプローチとして「回想法」という心理療法があります。回想法は、昔の出来事を話したり、思い出の品を見たりして、過去の出来事を語り合う療法です。高齢者は思い出を共有することで孤独感を緩和でき、満足感を得られると言われています。思い出話には、認知症の方が併発しやすいうつ症状を防ぐ効果も期待できます。

 

2-4 自尊心を傷付ける態度を取らない

認知症高齢者の自尊心を傷つける行動はNGです。自尊心を傷つける行動とは、頭ごなしの否定や無視などがあたります。認知症の方でも感情は残っており、症状が進行する不安感や会話が周囲と噛み合わない焦燥感を抱えている場合もあります。本人の気持ちに寄り添い、受け入れる姿勢で接することが大切です。行動や言葉よりも、本人の気持ちを大切に考えましょう。

 

2-5 コミュニケーションを取る環境に配慮する

認知症高齢者との上手なコミュニケーションを取るためには、環境への配慮が必要です。雑音のない場所、高齢者がリラックスできる場所は、話しやすく、相手の言葉も理解しやすい環境と言えます。天気の良い日なら、気分転換に散歩をしながら話すのもおすすめです。料理好きの高齢者なら、一緒に調理しながらコミュニケーションを取っても良いでしょう。大切なのは、穏やかな雰囲気で楽しくコミュニケーションを取ることです。

 

3 コミュニケーションが認知症にもたらす良い影響

効果的なコミュニケーションは、認知症にとってプラスの影響をもたらします。ここからは、認知症の方とコミュニケーションを取る重要性や、会話の機会を増やすコツを紹介します。

 

3-1 コミュニケーションによって認知症の進行が遅くなる場合も

コミュニケーションを取るとき、脳は「話の意図を理解する」「適切な言葉を探して話す」という働きを繰り返し、活発に動いている状態です。認知症は、脳へのポジティブな刺激によって進行を遅らせることができると言われています。例えば、寝たきりの人や家に閉じこもった高齢者よりも、周囲の人と積極的に会話する高齢者のほうが元気でいられるのは、想像しやすいでしょう。コミュニケーションによって、脳に良い刺激が与えられ、進行を遅くできる可能性があります。

 

3-2 コミュニケーションの機会を増やす方法

コミュニケーションの機会を増やすには、社会資源の活用がおすすめです。認知症にとってコミュニケーションが大切だと知っていても、高齢の親と離れて暮らしている場合など、なかなかコミュニケーションの機会を設けられないこともあります。また、高齢者の性格によっては、他人との交流を好まなかったり、たくさんの人と過ごすのが苦手だったりする方もいるでしょう。認知症高齢者が暮らす地域にある社会資源を活用できると、コミュニケーションの機会を増やせます。

認知症高齢者が利用できる社会資源には、以下のようなものがあります。

  • 介護保険サービス
  • 民間企業などによる見守りサービス
  • 地域で認知症高齢者を支えるしくみ

介護保険サービス

介護保険サービスには、ホームヘルプサービスや訪問看護、デイサービスがあり、他者とのコミュニケーションの機会を設けられます。特にデイサービスや通所リハビリテーションは、日中に介護施設などへ通い、健康チェックや食事の提供、レクリエーションなどのサービスを受けられます。同年代の人とかかわる機会が増えるため、会話も弾むでしょう。

介護保険サービスを利用するには、自治体窓口や地域包括支援センターへ申請し、介護認定を受ける必要があります。介護保険サービスを利用できるのは、介護認定により要介護もしくは要支援の判定が出た人です。認知症の疑いや日常生活にサポートが必要な状態になったら窓口に相談し、介護保険サービスの利用を検討しましょう。介護保険サービスが利用できれば、介護にかかる金銭的負担や家族の負担を減らせます。

民間企業などによる見守りサービス

民間企業などによる見守りサービスとして代表的なものには、配食サービスや高齢者宅を訪問し安否確認を行うサービスなどがあります。

配食サービスは、決まった日時に高齢者宅へお弁当などを届けてくれるサービスです。1食数百円~の手軽な料金で利用でき、自治体によっては補助もあるため、金銭負担が少なく利用できるのも配食サービスの魅力です。配食サービスの場合、スタッフが定期的に高齢者の元を訪れるため顔なじみになりやすく、コミュニケーションの良い機会になります。

高齢者の安否確認は、郵便局や新聞販売店、水道やガスの点検事業者が「見守りサービス」などの名称で行っています。地域で働く人が認知症高齢者を見守ってくれる安心感があるため、サービスを利用する人が増えています。

地域で認知症高齢者を支えるしくみ

認知症サポーターの育成や認知症カフェは、地域で認知症高齢者を支える取り組みです。認知症サポーターは、認知症の知識を学んだ人で、地域に住む認知症の方と家族をサポートする役割を担っています。認知症サポーターは、オレンジカフェと呼ばれる認知症の方が参加できるカフェの企画や、認知症高齢者をそっと見守る役割を担っています。オレンジカフェは、認知症の方と家族が気軽に外へ出る良い機会です。情報は自治体のホームページからも入手できる場合が多いため、確認してみましょう。

 

まとめ

認知症初期の高齢者は、身近な人の話が理解できないことや、会話が噛み合わないことに不安感や焦燥感を抱えている場合があります。身近な人は、本人の気持ちを大切に考え、受け入れる姿勢でコミュニケーションを取ることが大切です。穏やかに話せる環境を整えたり、話しやすい話題を会話に取り入れたりすると楽しい雰囲気でコミュニケーションが取れます。また、認知症高齢者とのコミュニケーションにストレスを感じたときは無理をせず、地域包括支援センターなどの相談機関を頼りましょう。

なお、奈良を中心に注文住宅・分譲住宅の建築販売をする株式会社日本中央住販では、不動産相続についての勉強会を開催します。勉強会は全5回、相続財産の中でも難しい不動産相続の基礎知識や必要な情報をわかりやすくお伝えします。勉強会で相続に備えておけば、家族や自分が認知症になってもトラブルの心配がなく、円満な相続ができます。勉強会は以下の日程で行いますので、ぜひご検討ください。

《講座内容》全5回(90分/回 10:00~11:30)

STEP18/6(火)「相続とは?相続のながれと最重要点を解説」
STEP28/20(火)「贈与と遺言書」
STEP39/3(火)「相続税と不動産」
STEP49/19(木)「節税・土地活用の方法やリスク」
STEP510/1(火) 「生前に出来ること」

参加費:第1回無料 第2回より1500円/回

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