介護保険という言葉はよく耳にする一方で、対象者や利用方法を知らない方も多くいらっしゃいます。介護保険は40歳で保険料の支払いが始まり、65歳になると介護保険証が届きます。しかし、介護保険サービスは、保険料の支払いや介護保険証のみでは利用できません。当記事では、介護保険の利用方法やサービスの種類について詳しく紹介します。
1 介護保険の使い方
介護保険は、申請することでサービス利用につながります。ここから解説するのは、介護保険の対象者やサービス利用までの流れです。親の介護を考えている方や、将来に向けて準備をしたい方は参考にしましょう。
1-1 介護保険を利用できる人は?
介護保険サービスを利用できる対象者は、介護保険の加入者である第一号被保険者と第二号被保険者です。
・第一号被保険者
第一号被保険者は、65歳以上の高齢者です。65歳になると市区町村から介護保険被保険者証(介護保険証)が送られてきます。
・第二号被保険者
第二号被保険者は、40~64歳までの医療保険加入者です。第二号被保険者が介護サービスを利用できるケースは、老化が原因の特定疾病と診断された場合です。
16種類の特定疾病
(引用:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」 引用日:2024/7/18) |
1-2 介護保険を利用するには申請が必要
介護保険サービスを利用するためには、市区町村の介護保険窓口や高齢者福祉窓口へ申請が必要です。申請の際は、介護保険被保険者証を持って窓口に行きましょう。第二号被保険者で介護保険被保険者証が未発行の場合は、健康保険証で構いません。
窓口で申請後、要介護認定が行われ、要介護1~5もしくは要支援1・2の認定結果が出ると、介護保険サービスを利用できます。なお、申請は、居住地を管轄する地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・施設などで代行できる場合があります。
1-3 要介護認定を受ける
以下は、申請から認定結果が通知されるまでの流れです。
申請 申請は本人もしくは家族が行います。 難しい場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所による代行が可能です。 |
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認定調査・主治医意見書 認定調査は、本人の心身の状態を把握するために行います。 ・調査場所:自宅や施設など本人が生活する場所 ・調査方法:市区町村から委託された調査員が、普段の様子をヒアリング 主治医の意見書は、市区町村から医師に依頼する書類です。 認定調査や主治医意見書の発行に自己負担金はありません。 |
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審査・判定 審査は、一次判定と二次判定が行われます。 ・一次判定:訪問調査の結果をコンピューターに入力して介護度を判定 ・二次判定:介護認定審査会と呼ばれる要介護度を決めるための会議 二次判定では、一次判定の結果をもとに、訪問調査の特記事項・主治医意見書の内容を審査します。 二次判定で出た結果が本人へ通知されます。 |
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結果通知 認定結果は、「要介護度1〜5」「要支援1・2」「自立」の8パターンです。 必要な介護量は、要介護>要支援>自立の順に多く、数字が大きいほど介護が必要です。 要介護度5はほとんど寝たきりの状態と考えてよいでしょう。 申請してから結果が通知されるまでの期間は約1か月です。 |
要介護認定は、有効期間があることに注意します。有効期間は、新規申請の場合で原則6か月、更新申請では原則12か月です。ただし、疾病などにより状態が大きく変わるときは認定結果の変更申請ができます。状態が大きく変わらない場合は、有効期間が終わる前に更新申請を行いましょう。
1-4 認定結果をもとにサービスを利用する
認定結果が出たら、サービス利用のためのケアプランを作成します。ケアプランを作成するのは専門家の仕事です。本人や家族がケアプランを作成する場合、煩雑な申請事務やサービス提供事業者との連絡調整をすべて自分たちで行わなければなりません。
要介護の方は居宅介護支援事業所、要支援の方は地域包括支援センターにケアプラン作成を依頼しましょう。ケアマネジャーなどの専門家が本人や家族の話を聞き、「どんなサービスがどれくらい必要か」「どのようなスケジュールにするか」といったサービス内容を盛り込んだケアプランを作成します。
2 介護保険のサービスには何がある?
介護保険のサービスは、居宅サービス・施設サービス・地域密着型サービスの3種類です。その他、住宅改修や福祉用具レンタルも介護保険が適用になる場合があります。ここから紹介するのは、それぞれのサービスについて大まかな内容です。
2-1 居宅サービス
居宅サービスは自宅などで受けられる介護サービスで、代表的なサービスとして以下などがあります。
・訪問介護(ホームヘルプ)/訪問入浴
介護職員や看護職員などが自宅を訪問し、身体介護や生活援助、入浴といった必要な支援を提供します。
・訪問看護/訪問リハビリテーション
訪問看護・訪問リハビリテーションは、看護師や理学療法士などが自宅を訪問し、医師の指示に基づいてサービスを提供します。訪問看護の役割は療養上の世話や健康管理、訪問リハビリテーションのサービス内容は日常生活機能の維持回復を目指したリハビリです。
・通所介護(デイサービス)/通所リハビリテーション
利用者が高齢者施設などに通い、食事、入浴、レクリエーション、リハビリ、健康管理といったサービスを受けます。
・短期入所(ショートステイ)
家族の介護負担の軽減や入所準備のため、施設に宿泊できるサービスが短期入所です。短期入所の連続利用日数は30日までと定められています。
2-2 施設サービス
施設サービスとは、施設入所のことです。介護保険で入所できる施設には、以下があります。
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
原則として要介護度3以上で入れるのが介護老人福祉施設です。施設では、食事・排泄・入浴といった生活に必要な介護、機能訓練、レクリエーションなど、本人の心身状態や希望に合わせたサービスを提供します。
・介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、在宅復帰を目指して一時的に入所する施設です。要介護度1以上の方が利用でき、一般的には3~6か月の期間で、生活介護やリハビリテーションを行います。
・介護医療院
長期にわたって医療的ケアが必要な利用者を受け入れ、看護や療養管理、介護を行うのが介護医療院です。介護医療院は要介護度1の方から入所可能で、看取りにも対応しています。
・特定施設入居者生活介護
指定を受けた有料老人ホームやケアハウスは、介護保険上の特定施設入居者生活介護として介護サービスなどが提供されます。
2-3 地域密着型サービス
地域密着型サービスは、原則としてサービス提供事業者と同じ地域に住む方のみ利用できます。地域密着型サービスの特徴は、規模や利用人数が小規模で、地域の実情に合わせたサービスが提供されることです。
・夜間対応型訪問介護/定期巡回・随時対応型訪問介護看護
地域密着型サービスの1つが、夜間に対応が必要な高齢者や緊急時の対応が必要な方のために訪問や巡回を行うことです。
・小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護とは、通所介護・短期入所・訪問介護を組み合わせて1つの事業所で行える自由度の高いサービスです。
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
グループホームは5~9人の入居者が生活し、認知症の症状に合わせたサポートを受けながら生活する施設です。
その他、デイサービスや施設入所の中にも、地域密着型サービスとして提供されているものがあります。
2-4 福祉用具貸与と住宅改修
・福祉用具貸与
福祉用具貸与は、レンタル費用の1割(所得によっては2~3割)を負担し、福祉用具を借りるサービスです。対象の福祉用具は、特殊寝台・スロープ・車椅子・歩行器など13種類で、介護度によって利用できるものが異なります。なお、衛生上の問題でレンタルになじまない福祉用具は購入となり、介護保険によって費用の払い戻しが可能です。
・住宅改修
介護保険の住宅改修を利用すると、改修費20万円までならば費用の1割負担(所得によっては2~3割)で済みます。改修は、原則として1人1回です。ただし、介護度が3つ上がったときや引っ越ししたときは再支給となります。
介護保険の住宅改修が適用になるケースは以下の6つです。
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3 そもそも介護保険とは?
ここからは、介護保険制度のしくみやサービスを利用したときにかかる自己負担金について解説します。
3-1 介護保険のしくみ
介護保険は、介護サービスを利用したい方のために介護費用を負担する社会保険です。制度の運営主体は市区町村であり、運営の資金は保険料と税金です。介護が必要な高齢者を社会全体で支えるしくみが介護保険と言えます。介護保険は、資金源が保険料や税金のため、給付のために申請や調査(=要介護認定)が必要です。調査の結果、介護が必要と判断されれば、介護サービスが利用できます。
3-2 介護保険料の支払い時期と方法
介護保険料の支払いは、40歳からスタートです。正確な支払い時期は、満40歳に達した月からです。ただし、満40歳に達する日は法律によって「誕生日の前日」とされているため、1日生まれの方は誕生日の前月から支払いが開始します。
64歳までの介護保険料の支払いは、加入している医療保険の保険料と一緒に徴収されます。65歳以上の保険料は、年金から天引きされる場合がほとんどです。介護保険料の金額は自治体によって異なり、全国平均は約6,000円になります。
(参考:厚生労働省「令和6年度介護納付金の算定について(報告)」)
3-3 介護保険サービス利用時の自己負担額
介護サービスを利用するときの自己負担額は、介護度別の支給限度額を超えない範囲ならば原則1割負担です。ただし、世帯の所得が高いと、負担割合が2割もしくは3割の場合もあります。
介護度別の支給限度額は、介護度が重い(要介護度の数字が大きい)ほど、高い傾向です。ケアプランを作るときは通常、支給限度額を超えない範囲でサービスを決めます。支給限度額を超えた場合のサービス利用料は、全額自己負担です。
まとめ
介護保険サービスを利用するには、まず市区町村への申請が必要です。申請後は、要介護認定が行われ、「要介護1~5」や「要支援1・2」の結果に応じて、サービスが利用できます。介護認定後は、自宅で暮らす方は居宅介護支援事業所のケアマネジャー、施設を希望する方は施設のケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーは、高齢者本人や家族の希望を踏まえたケアプランを作成します。
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