介護保険の認定調査は何をする?手続きの流れや後悔しない準備方法

介護保険の認定調査は、介護保険サービスを利用するための「要介護度」が決まる手続きです。認定調査について、あらかじめ認定の流れや内容を知っておくと、調査が始まったときに慌てません。ここからは、認定調査の流れや質問項目について、詳しい内容を解説します。訪問調査の具体的な質問項目や、事前にやっておくとよいことも紹介するため、準備に役立てましょう。

 

1 認定調査の流れを解説

認定調査は、本人や家族の申請によって行われます。申請から結果通知までの流れは、以下の通りです。

申請

訪問調査+主治医意見書

一次判定(コンピューター)

二次判定(介護認定審査会)

結果通知

ここからは、要介護認定の流れを詳しく説明します。

 

1-1 本人や家族の申請

要介護認定を受けるには、本人や家族などの申請が必要です。要介護認定を申請できるのは、65歳以上の人と、40歳以上で16種類の特定疾病と診断された人です。申請が受理されると、認定調査が行われます。

・申請場所

市区町村の窓口(介護保険課や高齢福祉課など)

・申請者

本人・家族、もしくは居宅介護支援事業所や地域包括支援センターの職員が代行できる

 

1-2 訪問調査

訪問調査では、介護認定調査員が高齢者の生活の場を訪れ、聞き取りを行います。介護認定調査員は、自治体の職員もしくは自治体に委託されたケアマネジャーなど、福祉や保健の専門家です。

介護認定調査員は、高齢者の生活の様子や身体・精神の状態を、本人や家族に質問します。調査内容を大きく分けると、概況調査・74項目の基本調査・特記事項の3つです。事前に調査の流れをシミュレーションしておくと、当日もスムーズに進みます。

 

1-3 主治医意見書

主治医意見書は、自治体から主治医に意見書を依頼し、作成されます。要介護認定の申請時、申請書には主治医を記入する欄があります。自治体は、記入された主治医へ直接意見書を依頼するため、高齢者本人や家族が医療機関に依頼する必要はありません。主治医がいない場合のみ、市区町村の指定医を紹介してもらい、新たに診察を受けましょう。なお、主治医の意見書は二次判定において大きな役割を果たします。介護認定を受けることをあらかじめ主治医に相談し、事情を説明しておくと、スムーズに進むことがあります。

 

1-4 一次判定(コンピューター)

一次判定は、訪問調査の聞き取り結果をもとに、コンピューターで判定されます。コンピューターが出力するのは、非該当・要支援1と2・要介護1~5のいずれかの結果です。実際の要介護度は、一次判定で出た結果や主治医意見書をベースに審議されます。

 

1-5 二次判定(介護認定審査会)

二次判定は、「介護認定審査会」と呼ばれ、正式な要介護度を決定する会議です。審査会は、5名程度の保健・医療・福祉の学識経験者からなる合議体で、開催頻度は自治体の規模などによります。二次判定では、一次判定の結果・訪問調査の特記事項・主治医意見書などを審査し、要介護度を決定します。二次判定で出た結果は、本人に郵送で通知されます。

 

1-6 結果通知

認定結果は、自治体から本人の元へ郵送されます。認定内容は、「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1~5」のいずれかです。なお、申請から認定結果が出るまでにかかる期間は、約1か月と言われています。訪問調査の日程が合わない、主治医の意見書が遅れる、介護認定審査会のタイミングなどによっては、1か月以上かかる場合もあります。

通知を受け取った後、在宅生活の方は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーにケアプランの作成を依頼しましょう。施設入所を希望する場合は、申し込みたい施設に直接連絡し、面談や見学を行う流れです。

 

2 訪問調査で質問される内容は?

訪問調査は主に、介護認定調査員が心身の状態や日常生活の様子について、聞き取りを行います。調査内容を大まかにわけると、概況調査・基本調査・特記事項の3つです。調査は、約1時間を要し、家族が同席できます。ここからは、訪問調査の内容である概況調査・基本調査・特記事項について、認定調査の資料をもとに解説します。

(出典:厚生労働省「認定調査員テキスト 2009」)

 

2-1 概況調査

概況調査は、現在利用しているサービスの種類・家族の状況・住環境・日常的に使用する機器の有無などを記します。概況調査は、二次判定の参考資料として用いられる場合があります。ただし、あくまで参考であり、判定の結果に直接影響はありません。

 

2-2 基本調査

基本調査は、身体や生活の状況など、あらかじめ決まっている74項目の聞き取りを行います。基本調査の74項目は、全国統一の基準であり、一次判定において要介護度を出す指標になります。基本調査の内容詳細は、以下の通りです。

  • 身体機能・起居動作(13項目)
  • 生活機能(12項目)
  • 認知機能(9項目)
  • 精神・行動障害(15項目)
  • 社会生活への適応(6項目)
  • 過去14日間に受けた医療(12項目)

具体的な質問内容は、麻痺の有無・歩行や起き上がりの状態・食事や入浴などの自立度・認知症の状態・服薬管理などです。体の動きや移動は、実際に行ってもらう場合もあります。調査員は、それぞれの項目ごとの評価「できる・できない」「介助されている・介助されていない」などにチェックを入れます。

質問は、高齢者の日常生活にかかわることなので、難しい内容ではありません。答え方に迷ったときは、ありのままの状態をなるべく詳しく伝えましょう。

 

2-3 特記事項

特記事項は、概況調査や基本調査の中で出てきた特別に配慮が必要な点や、基本の質問項目以外の困りごとを調査員が記入する箇所です。特記事項は、要介護度を認定する重要な判断材料です。日常生活の困りごと、不安、気になることは、遠慮なく調査員に伝えましょう。

 

3 訪問調査に向けた準備のポイント

訪問調査は、高齢者の心身の状態や普段の生活を知るために実施される調査です。ここからは、訪問調査に向けた準備のポイントを解説します。

 

3-1 家族が同席できる日でスケジュールを組む

要介護認定の申請時には、訪問調査の希望日時を書いて提出する場合がほとんどです。実際の調査日は、調査員からの電話連絡で調整します。

訪問調査には、高齢者本人とともに、できるだけ家族が同席してください。本人は、聞き取りの際に、普段できないことを「できる」と言ったり、無理してできるように振る舞ったりするケースもあります。普段と異なる状態で調査が進められると、正確な介護度が判定されず、介護負担が増える恐れがあります。家族は「よい状態を見せたい」という高齢者の心情に理解を示しつつ、本人の普段の姿を調査員に伝えましょう。

同席する家族は、普段介護している人など、高齢者の日常の様子を知っている人がおすすめです。実際の介護保険サービスが開始されると、ケアマネジャーや介護事業所の職員など、多くの関係者と連絡を取ることになります。介護関係者と連絡を取るキーパーソンを誰にするか、家族間で相談しておくと、後の手続きでも便利です。

 

3-2 高齢者の様子をありのまま伝える

正確な要介護度を認定するためには、高齢者の様子をありのままに伝えることが大切です。訪問調査を受ける人の中には、多くの介護保険サービスを利用したいと考え、実際の状態よりも大げさに伝えようとするケースもあります。一次判定時には「警告コード」があり、例えば寝返りの項目が「できない」にもかかわらず、洗身が「介助されていない」ときなどに表示されます。実際の状態と異なる調査結果は、判定時の不整合を引き起こし、再調査となるリスクがあります。

実際の状態と異なる判定結果は、高齢者の心身状態の悪化や、介護負担の増加につながりかねません。調査時には、高齢者の普段の様子をできるだけ正確に伝えましょう。

 

3-3 困りごとや気になることを事前にまとめておく

高齢者の状態で気になることや、介護する上での困りごとを事前にまとめておくと、当日も安心です。調査時には、高齢者や家族が緊張し、伝えたいことをうまく表現できない可能性があります。また、高齢者の認知機能が低下していると、介護側の認識と本人の発言が異なる可能性もあります。当日の伝え忘れや、「こんなはずではなかった」という事態を防ぎ、スムーズに調査を進めるために、伝えたいことをメモにするのがおすすめです。

高齢者本人の前で言いにくい事情がある場合、メモを調査員に渡しても構いません。どのような介護が必要か調査員に伝わるよう、介護者の視点で高齢者の様子をまとめましょう。

 

4 要介護認定の結果がわかったら行うこと

要介護度が認定されると、自治体から結果が通知され、介護保険サービスをスタートする流れになります。ここからは、在宅生活の高齢者が要介護認定の結果を受け取った後に行うことを解説します。

4-1 認定結果が要介護の場合

認定結果が要介護の場合、居宅介護支援事業所に連絡を取ります。居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーが在籍しており、介護保険サービスを組み合わせた「ケアプラン」を作成する場所です。担当ケアマネジャーと面談などを実施し、介護上の困りごとや希望のサービスを伝えましょう。介護保険サービスは、ケアマネジャーの作成したケアプランに沿って提供されます。

 

4-2 認定結果が要支援の場合

認定結果が要支援の場合、住まいの地域を管轄する地域包括支援センターに連絡します。要支援の場合、介護予防サービスが利用できます。地域包括支援センターの職員と面談後、ケアマネジャーが「介護予防ケアプラン」を作成する流れです。

 

4-3 認定結果に納得できないときは?

認定結果に納得できないときは、「区分変更申請」もしくは「不服申し立て」ができます。不服申し立ての場合、審査に時間がかかるため、迅速に介護サービスを利用したいときは、区分変更申請がおすすめです。

認定結果に納得できないときは、ケアマネジャーなど介護の専門家に相談するのも方法の1つです。現在の介護度でどのくらいのサービスが利用できるのか、どのような方法を取ると望んだサービスが受けられるのかなど、プロの目で判断してもらうと、本人や家族の負担が減ります。

以下で、区分変更申請と不服申し立てについて簡単に説明します。

・区分変更申請

区分変更は、現在認定されている要介護度の更新期間が来る前に、認定調査を申請する手続きです。申請すると認定調査が行われ、新規や更新と同じ流れで認定結果が通知されます。区部変更申請は、病気やケガによって高齢者の状態が変わったときに行われることが多く、必ずしも希望の要介護度に認定されるとは限りません。申請から新しい要介護度が通知されるまでの期間は、約1か月です。

・不服申し立て

不服申し立ては、都道府県の介護保険審査会に請求し、該当の要介護認定について審査してもらう手続きです。審査の結果、不適当だと認められれば要介護認定を取り消し、やり直すことになります。不服申し立ては、認定取り消しのための調査&認定調査のやり直し、という2つの調査過程があり、最終的な要介護度が出るまで数か月程度を要します。

 

まとめ

要介護度が決まる認定調査は、調査員が高齢者の自宅などを訪問し、聞き取り調査を実施します。調査内容は、高齢者の心身の状況や日常生活の様子です。調査には、なるべく家族が同席しましょう。また、調査前に介護についての困りごとや不安、高齢者の様子で気になることをまとめておくと、当日もスムーズに進みます。

 

高齢者が要介護状態になる原因は、「認知症」が多くの割合を占めます。高齢の親が認知症になると、土地や家の相続に問題が発生する場合も少なくありません。相続についての不安を軽減するためには、親が元気なうちから相続について知識を付け、準備をしておく必要があります。

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