家族介護で大変なことは?在宅介護の7つの負担と解消法を紹介

家族介護が始まるのは、高齢の親と同居するときや、入院していた家族が自宅に帰ってくるタイミングです。高齢者を受け入れる家族は、介護未経験の方が多く、不安を抱えたまま介護がスタートすることになります。当記事では、在宅介護を始める上で知っておきたい負担の内容や解決策を紹介します。これから家族介護がスタートする方や将来に備えたい場合の参考にしましょう。

 

1 家族介護の7つの負担と対処法

家族介護が「どれくらい負担になるのか」「どのような内容が負担になるのか」は、高齢者の要介護度・家庭環境・家族の状況といった要因で異なります。ここから紹介するのは、家族介護に従事する中で負担感が大きいと言われている内容です。負担の内容とともに対処法を解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

1-1 認知症への対応

認知症を発症すると、もの忘れや見当識障害により、高齢者とのコミュニケーションが難しくなります。認知症が進行すると、近所で迷子になったり、家事の手順を忘れたりすることも珍しくありません。認知症の介護は、本人がもの忘れを認めなかったり、家族が強い言葉で責めてしまったり、身近な家族だからこそ対応が困難なケースがあります。また、認知症が進行すると徘徊など危険な行動が現れ、日常生活の多くの部分で目が離せません。

認知症への対応は家族だけでは難しいため、自治体や民間の見守りサービスの利用がおすすめです。介護者が少しでも休めるよう、訪問介護・デイサービス・ショートステイといった介護サービスも積極的に利用しましょう。なお、高齢者が体操や趣味活動などによって体を動かすと、適度な疲労によって問題行動や精神状態が落ち着く場合があります。

 

1-2 排泄介助

排泄介助は、一日に複数回の対応が求められます。トイレが利用できる高齢者の場合、トイレへの誘導、移動・移乗の補助、着脱介助など、本人に合わせた対応が必要です。おむつの場合、衣類の着脱と寝返り動作の補助、おむつ交換を一日に何度も行います。本人の体を支える・動かす介護は、体の負担が大きく、腰痛を引き起こす場合があります。また、排泄物の匂いや汚物への抵抗感も、排泄介助を「つらい」と感じる原因でしょう。

特に夜間の排泄介助は、介護者が睡眠不足に陥る恐れがあります。十分に睡眠が取れない状況での介護は、介護うつや思わぬ事故につながりかねません。排泄介助は、ベッドのそばで使えるポータブルトイレや紙おむつの利用など、介護用品を活用しましょう。家族で対応できない場合、夜間の訪問介護サービスの利用も方法の1つです。

 

1-3 入浴介助

入浴介助は、風呂場での安全を確保しながら介助するため、肉体的な負担が大きい行為です。毎日の入浴になると、準備や後片付けにも時間がかかり、負担感はさらに大きくなります。

安全な入浴と介護負担軽減のためには、手すりや滑り止めマットといった介護用品の利用により、環境を整えることが大切です。デイサービスでの入浴や訪問入浴サービスを利用するなど、家の浴室を使わずに入浴する方法もあります。

 

1-4 外出の支援

通院や買い物など高齢者の外出支援は、事前準備や当日の予期せぬトラブルが介護の負担になります。介護者は、付き添いのためにスケジュールを調整する、タクシーを予約する、立地や行き方を調べておくなど、事前に準備しなければなりません。また、当日の天候によってはスケジュールを変えたり、服装を工夫したりする配慮も必要です。慣れない場所では、車椅子の有無やトイレの場所がわからず、トラブルが起きることもあります。

外出介助や通院介助が日常生活に必要なものと判断されれば、介護保険の訪問介護サービスが利用できます。また、要介護度1以上の高齢者ならば、介護タクシーの利用も可能です。なお、事業者によっては介護保険外での外出付き添いサービスを提供しているため、費用面などをよく確認し活用しましょう。

 

1-5 食事の準備

毎日の食事作りは、介護者にとって大きな負担です。高齢者の持病・嚥下の状態によっては、食事内容の工夫も必要になるため、献立や調理法に頭を悩ませる方もいます。

高齢者の食事準備には、配食サービスの利用がおすすめです。配食サービスは、高齢者の状態に合わせて、糖尿病食・腎臓病食・やわらか食・きざみ食など、さまざまなラインナップを揃えています。なお、自治体によっては配食サービスの費用助成があるため、住まいの地域で確認しましょう。また、訪問介護サービスに調理を組み込む、デイサービスを利用して昼食を取るなど、食事の準備にも介護保険サービスが活用できます。

 

1-6 服薬管理

認知症などにより高齢者自身での服薬管理が難しい場合、家族の負担は大きくなります。服薬管理は、高齢者の健康に直接影響するため、気をつかう介護です。

薬の服用は、お薬カレンダーを利用する、当日の薬を朝・昼・夜に分けて小袋に入れるなど、決められた時間帯に決められた種類と量を飲めるよう工夫しましょう。診察のとき医師に、高齢者が自分で服薬を管理することが難しい状況を伝えるのも方法の1つです。医師への相談によって、薬を間違えにくい形状にしてもらう、数を減らしてもらうなど、服薬管理の負担そのものを軽減できる可能性があります。

 

1-7 介護や医療関係者との連絡調整

介護が始まると、ケアマネジャー・医療関係者・行政職員・介護事業所の職員など、多くの人と連絡を取ることになります。在宅介護において、主に介護を行っている人や緊急の連絡先になっている人をキーパーソンと呼びます。家族介護では、負担がキーパーソン1人にかからないよう、家族間で介護サービスの情報や本人の状態を共有することが大切です。介護のキーパーソンになった人は1人で抱え込まず、他の家族やケアマネジャーに相談しましょう。

 

2 介護負担の根本的な原因

介護は、肉体面・精神面・経済面で強いストレスを感じます。ここから紹介するのは、介護負担の根本的な原因です。介護負担の原因は家庭によってさまざまですが、ここでは多くのケースにあてはまる4つの要素を紹介します。

 

2-1 心身が休まらない状態が続く

介護は、高齢者の生活のすべてをサポートする重労働です。介護者は、排泄・入浴・移動などのサポートによって体を酷使し、健康状態が悪化する恐れがあります。加えて認知症介護の場合、コミュニケーションが取れないことや問題行動によるストレスを感じます。介護者は、負担のかかる日々の積み重ねにより少しずつ疲労とストレスが蓄積し、心身の休まらない状態が続きます。

介護者が心身の休息を取るには、介護サービスをうまく利用しましょう。適度な休息によって介護者がリラックスできると、家族介護の負担軽減につながります。

 

2-2 経済的な負担

介護は、家計にも大きな負担がかかります。在宅介護を続ける場合も、施設入所の場合も、金銭的な負担は避けられません。また、介護のために遠方の実家へ何度も帰省することになったり、仕事を離職する状況になったりすると、負担はさらに増えます。

経済的な負担は、使える制度や割引サービスを用いると軽減につながります。例えば、介護休暇や介護休業の制度を利用すれば、離職せずに介護に携わることが可能です。また、自治体によっては、紙おむつ助成金や緊急通報装置貸与といった高齢者福祉サービスを設けています。民間企業でも、家族介護者の割引制度を設けている航空会社などがあります。制度やサービスをうまく組み合わせ、家計の負担を減らしましょう。

 

2-3 家族や周囲の人からの理解が得られない

家族や周囲の人から理解が得られないことも介護負担の原因です。他の家族は仕事が忙しい、遠方に住んでるなどの理由で介護に協力してもらえない場合があります。介護が原因で、家族関係が悪化したり、親族間の金銭トラブルが発生するケースもあります。さらに、介護の悩みは、友人や近所の人に話しづらい話題です。家族や周囲の人の理解不足は介護の負担感を大きくし、さらにストレスが溜まるといった悪循環を引き起こします。

家族や周囲の人の理解が得にくい場合、介護や福祉の専門家が介入するのも方法の1つです。ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員は、地域の社会資源の情報に詳しいため、相談すると現状の打開策が見える可能性があります。

 

2-4 社会からの孤立

介護者は多くの場合、高齢者との1対1の閉鎖的な環境であり、孤立しがちです。特に認知症など目が離せない状況は、いつ終わるかもわからず、社会から取り残される不安が高まります。閉鎖的な状況は、介護うつや虐待につながりかねません。

介護の悩みは、家族会やコミュニティサイトの活用によって解消されることがあります。同じ悩みを持つ人がいると知ったり、不安を打ち明けたりするだけでも「自分一人ではない」と意識が変わるきっかけになります。また、介護者自身が趣味や好きなことを見つけ、息抜きの時間を作ることも孤独感を解決する方法です。

 

3 介護の負担を減らす3つの方法

介護の負担は、介護サービスの利用や介護者が休息を取ることで、軽減できる可能性が高まります。ここからは、介護の負担を減らす具体的な方法を3つ紹介します。

 

3-1 介護サービスを利用する・増やす

介護サービスは、要介護者だけのものではなく、家族介護者の休息のためにも積極的に利用すべきです。負担を減らす介護保険のサービスとして、以下を利用できます。

・訪問介護(ホームヘルプサービス)

訪問介護は、自宅にヘルパーが訪れ、要介護者の身体介護・調理や掃除・買い物などを行うサービスです。サービスの内容と提供する時間は、高齢者の要介護度・環境・必要なサービスによって異なります。

・通所サービス(デイサービス・デイケア)

施設に通い、昼食・入浴・リハビリ・レクリエーションなどのサービスを利用するのが通所サービスです。通所サービスを利用できる日数や時間は、要介護度や施設で提供するサービス内容によって異なります。半日の通所サービスの場合は約3~4時間、1日の場合は約6~8時間の滞在時間が一般的です。

・短期入所(ショートステイ)

ショートステイは、要介護者が施設に数日間宿泊できるサービスです。ショートステイは、介護者がまとまった時間介護から離れられるため、休息や気分転換に適したサービスです。また、施設入所のお試しとしてショートステイを利用する場合もあります。

 

上記に挙げた介護保険サービスの他、民間企業などによる介護サービスもあります。介護保険外のサービスは多くの場合、全額自己負担なので、費用面をよく確認しましょう。

 

3-2 介護の相談ができる場所を作る

介護の相談ができる場所には、以下があります。

・ケアマネジャー、地域包括支援センター

利用したい介護サービスがわからない場合や、現在のサービス状況では負担が大きいときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談がおすすめです。一般的に、要介護度が出ている方はケアマネジャー、要支援もしくはこれから介護を考えている方は地域包括支援センターに相談しましょう。

・家族の会、介護教室

家族の会は、介護者同士の交流や負担軽減を目的とした場所です。介護者同士が集まるため、同じ悩みを抱える人に相談できたり、心に抱える不安を話したりできます。友人や近所の人に話しにくい話題も、介護者同士ならば話しやすい雰囲気です。介護教室は、介護のスキルを高めて負担を軽減したい人におすすめです。

・インターネットの介護コミュニティサイト

介護のコミュニティサイトは、掲示板で悩みを相談したり、介護知識を得られる場所です。時間や場所を問わずに利用できるコミュニティサイトは、リフレッシュしたいとき気軽に利用できます。サイトへの登録や書き込みの際は、個人情報の取り扱いに注意しましょう。

 

3-3 施設入所を検討する

介護負担が大きくなる前に、入所施設を検討する方法もあります。介護のつらさの1つは、終わりが見えないことです。施設入所という選択肢があるだけでも、負担軽減につながります。介護施設や有料老人ホームは、それぞれの場所で、対象者・雰囲気・生活スタイルなどが異なります。多くの施設で見学やショートステイの機会を設けているため、ぜひご活用ください。

 

まとめ

在宅介護で家族にかかる負担は、主に以下の内容です。

  • 認知症への対応
  • 排泄介助
  • 入浴介助
  • 外出の支援
  • 食事の準備
  • 服薬管理
  • 関係者との連絡調整

家族介護は、介護サービスの利用や、介護の相談ができる場所を見つけると負担軽減につながります。また、施設の情報を集める、見学に出向くといった方法で、施設入所を視野に入れると、気持ちが楽になる場合もあります。それぞれの家族に適した方法で介護の負担を減らしましょう。

 

親の介護が必要になると、土地や家の相続で問題が発生する場合があります。気づかないうちに親の認知症が進行し、相続トラブルや家族間の不和に発展するケースも少なくありません。家族みんなが健康なうちに相続の準備を進めておくと将来も安心です。

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