認知症の方が選べる老人ホーム|認知症に対応する4施設の費用や特徴

認知症は、高齢者の5人に1人がかかる疾病とも言われています。誰もが認知症になる可能性があり、家族みんなが安心して生活するためには備えが必要です。

当記事では、認知症の方が選べる老人ホームを4つ紹介します。施設の特徴や費用のめやすも紹介するため、施設を探している方や将来の備えをしたい方は、ぜひご参考になさってください。

 

1 認知症高齢者が入れる4つの老人ホームを紹介

認知症の方でも安心して入れる代表的な施設は、特別養護老人ホーム・グループホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅です。まずは、4施設を一覧表で簡単に紹介します。

費用年齢要介護度
特別養護老人ホーム(特養)原則65歳以上要介護3以上
グループホーム原則65歳以上要支援2以上
有料老人ホーム多くの施設が

60歳以上

施設による
サービス付き高齢者向け住宅

(サ高住)

多くの施設が

60歳以上

自立~介護度の低い方

ここからは、それぞれの施設の特徴や費用を詳しく説明します。

 

1-1 特別養護老人ホーム(特養)

特養は、日常生活に必要な介護を受けながら生活する施設です。施設には、介護士や看護師、生活相談員、ケアマネジャーといったスタッフを配置しています。入居は、要介護3~5の介護度が高い方が対象で、終身利用が可能です。認知症の方も、原則要介護3以上であれば受け入れています。ただし、重度の医療ケアが必要な場合や人員の状況によっては、入居できないケースもあります。

特養は公的施設なので、他の施設と比較して費用が抑えられます。入居時の初期費用はかかりません。月々の利用料については、要介護度や居室タイプによって異なり、多くても20万円以下です。

なお、認知症の方が特養を選ぶなら、ユニット型の施設がおすすめです。ユニット型は、10人前後の少人数を1ユニットとして生活空間を区切り、家庭的な雰囲気の中でケアを行っています。認知症高齢者の中には、生活環境の変化や大人数での生活に適応できない方もいます。ユニット型は個別ケアを重視するため、認知症の方も馴染みやすい環境です。

 

1-2 グループホーム

グループホームは、認知症の方がサポートを受けながら共同で生活する施設です。施設は、5~9人を1つのユニットとして、自分たちで家事などを分担します。グループホームの暮らしは、高齢者自身に役割があることが特徴です。自立した生活によって、身体機能の維持や、認知症の進行を緩やかにすることが期待されています。

グループホームで働く介護スタッフは、入居者の見守りや介助を行います。ただし、高齢者が身のまわりのことを自分でできたり、共同生活を送れたりすることが入居の条件です。そのため、共同生活を送れないほど認知症が進行した方や、寝たきりの方は、他の施設を検討しましょう。グループホーム入居後に身体介護が必要になったときや、医療ケアが必要な場合の入居継続は、施設によって対応が異なります

グループホームの費用は一般的に、入居一時金と月額利用料です。入居一時金は敷金のような考え方で、退去時に清掃費や滞納分を引いて返金されます。入居一時金に一律の基準はなく、施設によって金額や退去時の返金率が異なります。なお、月額利用料の相場は、約10~30万です。

 

1-3 有料老人ホーム

有料老人ホームには、介護付き・住宅型・健康型といった種類があります。中には、認知症ケアに力を入れている施設もあります。認知症高齢者が入居するなら、介護付き有料老人ホームもしくは住宅型有料老人ホームがおすすめです。

介護付き有料老人ホームは、施設に介護スタッフや医療スタッフが配置され、施設内で介護サービスを利用できます。住宅型有料老人ホームは、自宅と同じような環境で、掃除や食事といった生活支援サービスを受けられる施設です。介護が必要になったときは、外部の介護事業者と契約し、サービスを利用します。

有料老人ホームの費用は、公的施設と変わらない水準の施設や、高級マンションの賃料と同じくらいかかる施設など、幅があります。

 

1-4 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サ高住は、高齢者向けのバリアフリー住宅に賃貸で入居するスタイルです。多くのサ高住が60歳以上の介護度の低い方を対象にしており、介護が必要になったら外部の事業者と契約します。介護が必要になったときの対応については、契約前に把握しておくとトラブルになりません。

サ高住は、生活相談員などのスタッフが常駐しており、認知症の方でも安心して生活できます。環境の変化が苦手な認知症の方でも、サポートを受けながら自宅と同じように暮らせるでしょう。

サ高住の費用は、初期費用が0~数十万円、家賃が月々約10~30万円と、立地や物件によって差があります。家賃は居住するための費用なので、介護サービスを利用した場合は別途費用がかかることに注意が必要です。

 

2 認知症の方が施設に入所するタイミング

認知症は、疾病の進行や環境の変化により、家族介護が難しい場合があります。ここからは、認知症の方が施設入所を検討するタイミングを解説します。実際のタイミングは、住環境・家族の状況・経済状況などによって異なるので、ここで紹介するのは一般的な事例です。

 

2-1 認知症の症状に変化があったとき

認知症が進行し、症状に変化があったときは、施設入所を検討するタイミングです。認知症の症状には、記憶障害や判断力の低下などが挙げられます。認知症初期ならば症状が現れても、昔から習慣で行っていることにはできる方が多いため、在宅生活を継続できます。

中期になると、調理や掃除の手順を思い出せない、メモ書きしてもメモしたこと自体忘れる、外出した目的や場所がわからない、家までの道のりを忘れる、といった症状が現れます。徘徊や暴言、暴力、排泄の失敗など、家族介護が難しくなるケースが出てくるのも、認知症中期の特徴です。認知症の症状に変化があり、家族だけでは対応が難しくなったときは、施設入所を選択肢に入れましょう。

 

2-2 本人が施設入所に前向きなとき

高齢者本人が施設入所に前向きな姿勢を見せているときは、施設を探すよいタイミングです。認知症が進行すると、本人の意思が確認できないケースもあります。施設入所に向けて早めに動いておくと、症状が進行したときも慌てません。本人が入所に前向きなタイミングで、家族一緒に施設を探すと、満足できる結果につながります。

 

2-3 家族が負担を感じている状態

介護と仕事の両立や老老介護などにより家族に負担が生じているときは、施設を検討しましょう。一般的に認知症は、時間の経過とともに症状が進行します。重度になると寝たきりのリスクもあり、日常生活のあらゆる場面で介護が必要です。介護ストレスは、高齢者虐待や介護うつにつながるリスクがあり、高齢者と介護者の心身に影響を及ぼします。認知症介護が負担になっているときは、家族みんなの将来のため、早期に動き出すべきです。

 

3 認知症でも安心して暮らせる老人ホームの選び方

認知症高齢者は、疾病の特性から配慮が必要な場面が多くあります。ここからは紹介するのは、認知症の方が老人ホームを選ぶ際、重視するポイントです。主に、本人や家族の希望・金銭面・条件のマッチ度の3点から、老人ホームの選び方を紹介します。

 

3-1 本人が理想とする暮らし方に合っている

認知症高齢者が希望する暮らし方は、一人ひとり異なります。認知症が進行してもできるだけ自立した生活を送りたい、将来が不安なので終身利用の施設にしたいなど、本人の意向を確認することが大切です。

なお、認知症が進行すると、本人の意向がわからないケースがあります。施設入所を視野に入れている場合、なるべく早い時期から動きましょう。

 

3-2 将来にわたって金銭的な問題が起きない

施設入所に要する費用は、初期費用と月額利用料(または家賃)です。民間が運営する施設では、施設ごとに費用を決めるため、予想よりも出費がかさむ可能性があります。入所を検討する際は、将来にわたって支払い可能か検討しましょう。

認知症の方が選べる施設の中で費用を抑えられるのは特養などの公的施設です。一方で特養は、初期費用がかからないことや終身利用可能なことから人気が高く、申し込んでもすぐには入居できないケースがほとんどです。

なお、有料老人ホームやサ高住といった民間施設の中にも、初期費用がかからない施設や、月々の費用が公的施設と同じくらいの施設があります。

 

3-3 本人・家族の希望と施設の条件などがマッチしている

本人・家族が希望する環境や条件と合った施設なら、自宅を離れたあともその人らしく生活できます。予算・立地・住環境・日々の日課・スタッフの滞在時間や職種・生活の自由度・退去が必要になるケースなどの面で、どのような施設がよいか具体的に考えましょう。すべての希望を満たす施設を見つけるのは難しいため、どの希望を重視するか優先順位をつけます。

なお、入所にあたって実際に施設を見ておくのも大切です。施設を選ぶ際はホームページやパンフレットから候補をいくつか絞り、本人と一緒に施設を見学しましょう。見学のメリットは、施設の雰囲気を肌で感じられることや、入居条件の詳細を質問できることです。認知症の方の場合、スタッフの配置人数や夜間の対応も確認しておくと安心です。

 

3-4 医療行為・医療的ケアが施設で可能か

施設で医療行為・医療的ケアがどこまでできるのか確認しておくと、処置が必要になったときの備えができます。例えば、インスリン注射や在宅酸素療法、ストーマの処置などは、看護師でなければできません。一方で、喀痰吸引や経管栄養といった医療的ケアは研修を受けた介護スタッフで対応できる施設もあります。

医療行為・医療的ケアは、終身利用の可否にかかわります。特に、認知症の他にも持病がある方の場合、どのような医療行為・医療的ケアができるのか確認ましょう。

 

まとめ

認知症の方でも安心して入れる施設には、特別養護老人ホーム・グループホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅があります。それぞれの施設は、費用や環境が異なります。入所を希望する施設が本人と家族の希望に沿っているか、事前のパンフレット請求や見学などで確認しましょう。

認知症は多くの場合、症状が中~重度になると、家族介護が難しくなります。また、症状が進行すると、本人の意思が確認できない場合が多くなります。家族に大きな負担がかかる前に、施設入所を準備するのも、将来に向けた備えの1つです。

 

将来の備えとして《相続》の準備は進んでいますか?

親が認知症などにより判断能力が低下してしまうと遺言を残すことは勿論、その他ほとんどの相続対策が出来なくなります。

多くの財産が失われたり、多額の税金がかかってしまったり親族同士の相続トラブルが起きる可能性もあります。

家族みんなが元気なうちから意思を確認し、相続の準備に取り組みましょう。

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