滋賀県といえば、琵琶湖です。日本一の大きさを誇る琵琶湖は、その大きさに誰しも1度は驚きます。
そのため、もし移住するなら琵琶湖の近くに住みたいと考える人は多いでしょう。事実、琵琶湖の近くは人気があり、2024年現在において多くのマンションや一軒家が建築されています。
一方で、気を付けなくてはいけない存在がいます。「びわこ虫」です。琵琶湖沿いに住む滋賀県民なら、必ず耳にする経験のある虫ですが、非常に厄介な存在でもあります。
そこで今回は、「びわこ虫で悩まない心得」について解説します。新築・賃貸を問わず、滋賀県の大津市に住むのなら、ぜひ知っておきたい知識です。ぜひ参考にしてください。
「びわこ虫」とはユスリカのこと
びわこ虫と良く呼ばれていますが、実際はそんな名前の虫はいません。滋賀県民がある種の親しみと憎しみを持って呼んでいる「びわこ虫」の正体は、ユスリカです。どのような特徴があるのか、まずは以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- びわこ虫の特徴
- 発生時期は春と冬の2回
- 一部の地域だけ発生する
- 人に影響はない
びわこ虫の特徴
先述したように、びわこ虫は通称です。一般的にはユスリカと呼ばれる仲間の成虫を指します。
ユスリカは、水中に産み落とされた卵から孵化し、幼虫の時は湖底で有機物などを食べて成長し、サナギを経て羽化し、成虫になります。そのため、我々が肉眼で見るのは、成虫の時期がほとんどです。
成虫の期間は1日~2日と非常に短く、その間に蚊柱を作って交尾を行い、産卵します。トータルで考えると、一生のうち、ほとんどを水の中で過ごす昆虫なのです。
そんなユスリカの中でも、びわこ虫と呼ばれるのは以下の4種類。
- オオユスリカ
- アカムシユスリカ
- ウスグロヒメエリユスリカ
- ツヤユスリカ
どちらも滋賀県固有の生物ではなく、全国に分布しています。名前でピンと来た方もいるかもしれませんが、釣りエサとして良く利用される「アカムシ」は、アカムシユスリカの幼虫です。
自然界にとってなくてはならない存在であり、幼虫時には有機物を食べ、成虫になると水中から飛び出すため水質を改善してくれます。魚や鳥などのエサにもなり、生態系には欠かせません。
ですが、そんなびわこ虫は、不快害虫としての側面もあります。次の項目で詳しく見ていきましょう。
発生時期は春と冬の2回
びわこ虫が発生するタイミングは、春と冬の2回あります。以下をご覧ください。
- オオユスリカ:3月~4月
- アカムシユスリカ:11月~12月
オオユスリカは、全国的には3月~6月、9月~10月に発生しますが、琵琶湖の場合は3月~4月がピークです。花粉症と同じタイミングだと覚えておきましょう。近年はさらにウスグロヒメエリユスリカとツヤユスリカも発生しているため、非常に厄介です。
どの種も大量に発生するため、年に2回は駆除に追われることになります。何の被害がなかったとしても、光に集まる習性があるため、夜には大量のびわこ虫が宙を舞います。琵琶湖の近くに住むなら、春と冬の2回は要注意の季節です。
一部の地域だけ発生する
びわこ虫は、滋賀県の中でも一部の地域でしか発生しません。琵琶湖の南部の、ごく一部だけです。地理的な場所としては、「大津京~膳所」のあたりまでになります。
理由は、先述したびわこ虫の生態にあります。幼虫期は湖底で有機物を食べるのですが、琵琶湖の南湖はプランクトンが多く、栄養過多の状態です。流れもあまりないため、非常に育ちやすい環境となっています。
特に1990年代後半から水草の分布が拡大しているため、ユスリカの幼虫にとって隠れ家が豊富にある状態です。以下を見てみましょう。
- オオユスリカ・アカムシユスリカ:湖底で育つ
- ウスグロヒメエリユスリカ・ツヤユスリカ:水草で育つ
プランクトンや水草の量など、琵琶湖の状態によって発生するびわこ虫の種類が変わります。ただし基本的に、該当する地域以外に住んでいれば、びわこ虫の被害は受けません。虫が嫌いな方は、琵琶湖の近くに住むのは止めた方が良いでしょう。
人に影響はない
ユスリカと聞くと、蚊のように実害があるような気がしてしまいますが、大丈夫です。ユスリカは吸血しない蚊であり、成虫は雄も雌も血を吸いません。蚊やアブのように、刺したり噛んだりしてこないのです。
というのも、ユスリカは口器が退化しています。ほとんどの種類のユスリカはエサを食べられないため、わずか数日で命を落とします。びわこ虫も、多くは1日~2日の命です。分類から見ても、以下のように異なります。
- ユスリカ:ハエ目ユスリカ科
- 蚊:ハエ目カ科
同じハエ目に属してはいますが、異なる生物です。そのため、ユスリカが大量に集まっても人に被害はありません。ただ、不快なだけです。
滋賀県に住むなら知っておきたい賃貸・新築の「びわこ虫」の被害
滋賀県に住むとなった場合、真っ先に考えるのが琵琶湖畔です。日本一の湖を眺めながら生活するスタイルに憧れて、一軒家やマンションに住もうと考えている方も多いでしょう。
そのような場合、以下の被害が起こる可能性があるのは覚えておいてください。
- 尋常じゃない数が発生する
- 大量の蚊柱ができる
- 家の壁にびっしりつく
- コンビニやスーパーの窓にびっしりつく
- 車にも大量につく
- 高階層でも家の中に入ってくる
- 飲食店の中に入ってくる可能性がある
- 駆除のコストが大きくかかる
- アレルギーの原因になる可能性ある
尋常じゃない数が発生する
びわこ虫は、尋常じゃない数が発生します。あまりにも大量発生するため、新聞に取り上げられるほどです。近年、カメムシが大量発生したと報道されましたが、比ではありません。
昼夜問わず発生するため、昼でも大量に見かけます。建物の模様かと思ったらびわこ虫だった、というのは滋賀県あるあるです。
また場所を選ばないので、窓はもちろん券売機や自動販売機にもびっしりと張り付きます。虫嫌いでなくとも近付くのを躊躇するほどです。
びわこ虫が発生する地域では、生活に支障が出るほどの数が発生すると覚悟しておいた方が良いでしょう。
大量の蚊柱が発生する
びわこ虫は、窓や壁に張り付くだけではありません。大量の蚊柱を作ります。びわこ虫であるユスリカにとって、蚊柱は大切な繁殖行動です。貴重な出会いの場ともいえるでしょう。私達が出会いに苦しんでいるように、ユスリカもまた出会える場所を探して蚊柱を作っています。1日~2日という非常に短い期間の中で、蚊柱で出会って命を残していくのです。
非常に神秘的に感じますが、大量に発生するため、蚊柱の数も尋常ではありません。用水路を歩いていたら、口の中に飛び込んでくることもあります。
びわこ虫が大量発生する時期は、水の近くを歩けなくなるのです。虫嫌いの方にとっては、地獄のような期間になります。
家の壁にびっしりつく
びわこ虫が大量発生すると、家の壁にびっしりつきます。あまりにも数が多いため、遠目で見ると工事用のグレーの幕を張っているのかと思うほどです。
特に注意したいのが光。びわこ虫を含めて、虫は光に集まる習性があるため、窓から漏れる光は格好の的になります。家はもちろん、マンションやアパートも含めて、遮光対策が必須です。
虫が苦手な方にとって、恐怖以外の何物でもない光景が広がるでしょう。
コンビニやスーパーの窓にびっしりつく
家と同じ理屈にはなりますが、コンビニとスーパーの窓にも、数え切れないほどのびわこ虫が寄ってきます。そのため、場所によってはブラインドで中から見えないようにしているお店もあります。中に入ってこないように、業務用の扇風機を扉の前に設置しているところもあるほどです。
仕事帰りにふと寄ったお店で、びわこ虫と遭遇したなんてケースは多々あります。大量発生する時期は、お店に寄るのにも注意が必要です。
車にも大量につく
びわこ虫が大量発生すると、駐車場の明かりに集まることがあります。自宅なら明かりをつけっ放しはまずしないと思いますが、問題はマンションやアパートです。住人のために明かりを常につけていると、びわこ虫が寄ってきます。
結果、自然な流れで駐車中の車にもびっしりつきます。出勤しようと思って車を見たら、びわこ虫だらけだった、なんてケースもあるほどです。明かり近くが駐車スペースだと、びわこ虫が蚊柱を作っている中、駐車しなければいけません。虫だらけの中で駐車するのは、精神的にキツいものがあります。
場合によってはグリルなどの隙間から車の内部に入り込む可能性もあるため、危険です。大量発生する際は、駐車スペースにも気を付けた方が良いでしょう。
高層階でも家の中に入ってくる
虫といえば、高層階は入ってこないと良く言われます。例えばゴキブリの場合、4階以上には出ないと聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ゴキブリは高い位置から低い位置に向けてしか飛べないため、高層階には侵入できないのですね。もちろん、何かにくっついて入ってきた場合は除きます。
一方で、びわこ虫は10階以上であっても平気で家の中に入ってきます。理由は簡単。体が軽いためです。
びわこ虫であるユスリカは非常にもろく、少し触った程度でバラバラになります。そのため非常に軽く、少しの風が吹くと上空まで舞い上がります。10階までは難なく到達してしまうのです。
そのため、高層階でも油断できません。ゴキブリやハエのような普通の虫とは少し違うと覚えておきましょう。
飲食店の中に入ってくる可能性がある
びわこ虫が大量に発生する時期は、湖岸近くのお店を利用する際に注意しましょう。お店がどれだけ万全の対策を取っていたとしても、何かしらの隙間から中に入り込んできます。オープンテラスを利用しようものなら、びわこ虫の中でご飯を食べるようなものです。
お店の中であろうと、油断できません。特に夜は明かりのある場所を中心に飛びまくるので、注意しましょう。
「これだけ発生しているのだから仕方ない」くらいの気持ちでいる方が、飲食店をストレスなく利用できます。
駆除のコストが大きくかかる
びわこ虫には、様々な対策グッズがあります。中でも代表的なのが、薬剤です。普通の虫と同じく、以下のように考える人は注意しましょう。
- 虫コナーズを玄関につるせばいい
- 網戸に蚊が止まらないやつを吹きつければ対策になる
これらは全て無駄です。びわこ虫が発生する時期は薬局やホームセンターに薬剤が売られますが、ほとんど効果はありません。びわこ虫は大きく、小さい蚊をターゲットにした薬剤が効きにくいためです。数も大量にいるため、多少駆除できたところで焼け石に水でもあります。
アレルギーの原因になる可能性がある
びわこ虫が大量発生する際に注意したいのが、アレルギーです。人によっては、鼻炎や喘息を引き起こす可能性があります。特に死骸には注意しましょう。知らない間に死骸の一部が体内に入ると、アレルギーが出ることも。。。
大量発生の時期はマスクをするといった対策が必要です。
滋賀県民が知っておきたい賃貸・新築の「びわこ虫」の対策
滋賀県に住んでいると、びわこ虫とは必ず遭遇します。もし遭遇した場合は、以下の対策をしてみましょう。被害を減らせます。
- マスクやメガネをつける
- 外に洗濯物を干さない
- メンタルを鍛える
マスクやメガネをつける
びわこ虫は、大量発生していると目や口に飛び込んでくることがあります。特に口は、自転車や原付に乗っている場合に注意しなければいけません。
びわこ虫が発生する時期はメガネやマスクをつけるようにしましょう。移動中だけでもつけておくと、安心感が大きく違います。
特に明かりや水辺の近くは蚊柱が発生しているので、近くを通らないようにしつつメガネやマスクでデリケートな部分を保護してください。
外に洗濯物を干さない
びわこ虫が発生する時期は、外に洗濯物を干してはいけません。大量のびわこ虫が、洗濯物に取りつきます。あまり気分の良いものではありませんよね。
そのため、外に干さないように以下の方法を駆使する必要があります。
- 部屋干しする
- 衣類乾燥機を使う
- ドラム式洗濯機で乾燥までする
家の中で洗濯を完結できるようにすると、安心して生活できます。室内干しが難しい場合は、サーキュレーターを使いましょう。部屋干しの効率が上がりますし、冷暖房効率をアップさせる効果もあります。
メンタルを鍛える
結論、最終的にメンタルを鍛えるのが最も良い方法です。びわこ虫は不快なだけで人間に対して害をなすわけではありません。むしろ琵琶湖の汚れを食べてくれる掃除屋さんなので、生態系には欠かせません。
びわこ虫は、他府県でいえば「北海道の雪」「沖縄の台風」くらい日常的なものです。人がどうこうできるものではないと達観するようにしましょう。それくらいがちょうど良い距離感を保てます。
滋賀県民が知っておきたい効果のない「びわこ虫」の対策
びわこ虫には、一般的に言われている対策があります。ですが、以下の方法は効果がないので、やらないようにしましょう。
- 高層階に住む
- 壁の色を塗り替える
- 殺虫剤や忌避剤を使う
高層階に住む
先述したように、びわこ虫は風に乗って高層階にも易々と飛んできます。そのため、他の害虫と同じように高層階に住んでも安心できません。
県南部の琵琶湖畔に賃貸もしくは新築で住む場合、高層階でも関係なく遭遇すると考えておきましょう。バルコニーには高確率でびわこ虫がいます。
壁の色を塗り替える
壁の色が白いと、びわこ虫が大量につくといった話があります。ですが、関係ありません。壁の色に関係なく、びわこ虫はつきます。
問題があるのは、壁の色ではなく光です。光を漏らさないようにする工夫をして対策しましょう。
- 等級レベル1級の遮光カーテンを使う
- 窓から光が出ないように板で塞ぐ
- 無駄に明かりをつけない
壁の色を塗り替えるとなるとコストもかかるので、まずは身近にできる対策から取るようにしましょう。
殺虫剤や忌避剤を使う
先にも記載の通り、びわこ虫の季節になると殺虫剤や忌避剤が大量に店頭に陳列されますが、その効果は満足できるものではありません。
それよりも、死骸を放置しておくと腐臭が出るので、素早く掃除する方が大切です。ホウキとちりとりを使って、すぐに片付けるようにしましょう。衛生面でも重要です。
滋賀県に住むなら賃貸・新築どちらも「びわこ虫」と正しく付き合おう
滋賀県に住むなら、賃貸・新築問わず「びわこ虫」との付き合い方を考える必要があります。特に大量発生する南湖の近くに住んでいる方は、発生時期には注意しましょう。その時期だけでも部屋干しに切り替えたりマスクをつけたりと、できる対策を取って時期が過ぎるのを待つしかありません。
最後にびわこ虫は、琵琶湖の生態系に欠かせない存在です。究極、慣れるのが最適な対策になります。虫だからといって恐れずに、自然現象と考えて正しく付き合っていきましょう。