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近年、日本における空き家問題は深刻化しています。

特に人口減少や高齢化、都市部と地方の格差などが相まって、全国で空き家がどんどん増加しています。

増え続ける空き家に対処するため、2023年に法改正がおこなわれ、国の空き家対策が強化されました。

そこで今回は、日本の空き家問題の現状やその原因、引き起こされる問題、解決策などについて詳しく解説していきます。

さらには、国の空き家対策が強化されたことで所有者にどのような影響があるのかについても詳しく解説していきます。

空き家問題とは?

「空き家問題」とは、長期間使用されていない住宅や建物が増加し、地域社会や経済に悪影響を及ぼす問題です。

空き家の数は、総務省の統計によると、10年前はおよそ820万戸だったものが、現在ではおよそ900万戸まで増えています。その数は年々増加傾向にあります。

空き家となった住宅が長期間放置されることで、周辺地域の治安の悪化や景観が損なわれるなどの恐れがあり、不動産価値の低下を引き起こすことも少なくありません。

さらに、災害時には倒壊の危険性も高まり、地域社会全体に大きなリスクをもたらします。

空き家問題が起こる原因

空き家問題がこれほど深刻化しているのには、いくつかの要因が考えられます。以下では、空き家問題が起こってしまう主要な原因について詳しく見ていきましょう。

・人口減少と高齢化

・新築が好まれる傾向

・節税のため

このような空き家問題が起こる原因について、順番に解説していきます。

人口減少と高齢化

日本の人口は長期的に減少傾向にあり、特に地方の過疎化が進行しています。

人口減少に加えて高齢化が進んでいることで、空き家問題が起こってきていると考えられます。

地方の過疎化の原因として考えられるのは、若い世代が都市部へ移住し、地方に住む高齢者が亡くなったり、介護施設に入居すること。このような人たちがもともと住んでいた住宅が、空き家となるケースが増えているのです。

地方の多くの地域では、後継者がいないため、家を維持・管理できる人も減少しています。

新築が好まれる傾向

日本では、住宅を購入する際には新築物件が好まれる傾向が強くあります。

これは、日本の住宅市場が新築中心に発展してきた背景や、新築物件に対する心理的な価値観が根付いていることが一因として考えられます。

そのため、中古物件の市場が十分に成熟しておらず、空き家となる物件が増え続けることになります。

新築住宅が売れ、中古住宅がなかなか売れないという状況によって、日本の空き家問題が加速していると考えられるのです。

節税のため

一部の所有者は、空き家を取り壊さずに置いておくことで固定資産税の軽減を受けることができるため、空き家を放置するケースがあります。

空家の場合、最大で1/6まで固定資産税が減額される制度がありますが、更地にしてしまうと、この減税措置を受けることができません。

解体費用をかけずに税金の負担を減らそうとする意図から、空き家が放置されてしまうことにつながるのです。

空き家問題が引き起こす問題点

空き家が増加すると、地域社会や住民に対してさまざまな悪影響が生じてしまいます。以下では、空き家問題がもたらす主な問題点について詳しく解説します。

空き家問題が引き起こす問題点として挙げられることが多いものは以下の通りです。

・治安の悪化

・衛生・景観上の問題

・火災リスクの増加

・近隣家屋への影響

・不動産価値の低下

・土地の機会損失

ひとつずつ順番に詳しく見ていきましょう。

治安の悪化

空き家が増えると、地域の治安が悪化するリスクが高まります。

放置された空き家は、人目に付きにくいため、不法侵入や犯罪行為の温床となることが少なくありません。

特に、都市部の住宅密集地域や郊外の閑静な住宅地においては、空き家があるだけで地域住民に不安を与えてしまうことにもなりかねません。

衛生・景観上の問題

空き家は、時間が経つにつれて劣化し、周辺環境にも悪影響を与えることがあります。

例えば、屋根や外壁が傷み、見た目が悪くなるだけでなく、庭や敷地内に雑草が生い茂り、ゴミが放置されることが多くなります。

また、害虫や動物が住み着くこともあり、周辺の衛生状態を悪化させる要因となります。

このような環境悪化は、地域全体の景観を損ね、周辺住民の生活の質の低下を招くことにもつながってしまう可能性があります。

火災リスクの増加

空き家は、長期間管理されないため、火災リスクが大幅に増加します。

老朽化した建物は電気配線やガス管の劣化が進んでいる可能性が高く、ちょっとした事故や自然災害が引き金となって火災が発生する危険性があります。

特に、密集した住宅地では、空き家から発生した火災が隣接する家屋に延焼するリスクも高くなり、地域全体を巻き込んだ大規模な被害が発生することも考えられます。

近隣家屋への影響

放置された空き家が老朽化することで、最悪の場合、倒壊してしまうというリスクもあります。

空き家が崩壊してしまうと、隣接する家屋や道路に被害を及ぼす可能性があり、周辺の住民にとって重大な安全リスクとなります。

また、空き家が倒壊した際には、所有者に多大な賠償責任が発生することも考えられ、周囲の住民とのトラブルの原因になってしまう可能性もあります。

不動産価値の低下

空き家が多く存在する地域では、不動産価値が下がる傾向があります。

空き家が増えることで、その地域全体のイメージが悪化し、居住を希望する人が減少するため、不動産の売却や賃貸が難しくなります。

特に、長期間放置された空き家が多い地域では、住民の流出が進み、さらに空き家が増えるという悪循環に陥る可能性もあります。

土地の機会損失

空き家が放置され続けることで、その土地が有効に活用されないまま、地域の発展が阻害される可能性があります。

本来であれば、新たな住宅地や商業施設として活用されるべき土地が、空き家のまま放置されることで、地域の経済活動や雇用機会が損なわれてしまうのです。

このような機会損失は、長期的に見れば地域全体の活力を低下させ、人口減少をさらに加速させる要因ともなってしまいます。

空き家問題を解決する方法

空き家問題に対処するためには、個人や自治体が積極的に対策を講じる必要があります。ここでは、具体的な解決策をいくつか紹介します。

・空き家バンクに登録する

・行政の空き家対策制度を活用する

・リフォームをする

・早めの相続対策をする

・賃貸物件として活用する

空き家問題を解決することができる上記5つの方法について詳しく解説していきます。

空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、各自治体が運営する空き家情報の公開システムのこと。

空き家を所有している人がその物件を売却や賃貸に出すために活用できる制度です。

空き家バンクに登録しておくことで、物件の情報が広く公開され、新たな所有者や利用者が見つかる可能性が高まります。

田舎に移住したいと考える人の多くが空き家バンクを活用して物件を探しているため、効果的に購入者や賃借人を見つけることが可能になります。

これにより、空き家の再利用が促進され、地域の活性化にもつながる可能性があります。

行政の空き家対策制度を活用する

空き家問題に対処するための支援制度を設けている自治体も。

空き家の解体費用やリフォーム費用の一部を補助する制度や、空き家の利用を促進するための情報発信を積極的におこなっている自治体があります。

こういった制度を活用することで、空き家の管理や活用がより容易になり、問題の解決につながるでしょう。

現在空き家となっている不動産をお持ちの方や、空き家を活用して暮らしたいと考えている方は、是非一度お住まいの自治体が空き家対策の独自の制度を設けているかを確認してみてください。

リフォームをする

空き家を再利用するためにリフォームをするというのもひとつの方法です。

特に、古い住宅を現代のライフスタイルに合わせてリノベーションすることで、新たな価値を生み出すことができます。

リフォーム後の物件は、自分で住むという使い方だけでなく、賃貸物件や民泊施設として活用するなど、さまざまな利用方法が考えられます。

また、リフォームによって物件の資産価値が向上し、売却や賃貸の際に有利になることも期待できるでしょう。

早めの相続対策をする

空き家の発生を防ぐためには、相続の際に早い段階で対策を講じることが重要です。

親族が亡くなり、相続が発生した場合には、手続きを迅速に進めることで、空き家を放置せずに済みます。

相続人が協力して物件の管理や売却、活用方法を検討することで、空き家の問題を未然に防ぐことができるでしょう。

相続が発生する前から親族同士で将来の活用方法についての話し合いをしておくこともおすすめです。

またその際には、税理士や行政書士などのような専門家からアドバイスを受けながら相続対策をおこなうことで、トラブルを回避しやすくなります。

賃貸物件として活用する

空き家になってしまった住宅をそのまま放置するのではなく、賃貸物件として活用することで収益を得ることができる場合もあります。

特に、住宅供給の需要が高いエリアでは、リフォーム後に賃貸物件として利用することで、空き家を有効に活用できるでしょう。

賃貸物件として運用することで、維持費や固定資産税をまかなうことができ、所有者にとっても経済的に大きなメリットがあります。

国の空き家対策が強化されました

国は空き家問題を深刻に受け止め、対策を強化しています。

増え続ける空き家問題に対処するため、2023年(令和5年)6月7日に、「空き家対策特別措置法」が成立。

これまでは、多くの空き家で固定資産税の支払いを最大で1/6に減額する特例が適用されてきました。

空き家対策特別措置法が適用される前までは、「特定空き家」に指定されてしまうことで、この減額特例を受けることができなくなっていました。しかし2023年の法改正によって、特定空き家になる前の段階である「管理不全空き家」に指定された場合でも固定資産税の減額の特例を受けることができなくなりました。

「管理不全空き家」とは、このまま放置すればいずれ「特定空き家」になる可能性がある空き家のこと。雑草が生い茂っていたり、窓や壁の一部が壊れていたりする住宅のことを指します。

さらに2024年4月からは、相続登記が義務化されました。

これにより、土地や家屋などの不動産を相続すると、これまで以上にきちんと管理をしなければならなくなりました。

登記が義務化されたことで、空き家の所有者が明確になります。これまでは、相続後に登記をすることが任意であったため、所有者不明の空き家や空き土地がどんどんと増えていましたが、これからはそうはいきません。

所有者が空き家を管理せずに放置していると、固定資産税の減税措置が受けられなくなってしまいます。

また、相続が発生していることを知っているのに登記をせずに放置していると、正当な理由がない限りは最大で10万円の過料が科される可能性がある点にも注意しましょう。

まとめ

空き家問題は、日本が直面している大きな社会問題の一つです。

地方の過疎化や人口減少、高齢化などが進む中で、空き家問題は今後も深刻化する可能性が高いです。

しかし、所有者自身が適切な対策を講じることで、空き家の増加を防ぎ、地域社会の発展に貢献することができるでしょう。

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