建物を所有している方にとっては、トイレの困ったトラブルは避けて通れない問題の一つです。特に建物の築年数が15年以上経っている場合、配管の劣化や器具の老朽化によってトイレのトラブルを引き起こす可能性が高まります。
今回は、築年数が古い建物で起こり得るトラブルの内容や応急処置の方法、トイレにまつわる部品の耐用年数や応急処置を行う際の注意点について解説していきます。築年数が15年を超える建物をお持ちのオーナー様は、ぜひ参考にしてください。
トイレタンクの仕組みと部品
トイレのトラブルについて知る前に、トイレタンクの仕組みの部品について知っておきましょう。トイレタンクには、以下の部品が使用されています。
手洗い管 | タンクの上部についている手を洗うための蛇口 |
ボールタップ | 給水管からの水の供給を制御して水の量を調整する内部パーツ |
ピストンバルブ | 給水管から排水管へ水を流すための内部パーツ |
止水栓 | 水道管からの水の供給を止めたり量を調整したりする栓 |
支持棒 | 浮き玉とボールタップをつなぐ棒 |
浮き玉 | タンクの内部の水量を調整する内部パーツ |
オーバーフロー管 | 一定量以上の水を便器へ排出するための内部パーツ |
ゴムフロート | トイレへの注水を調整するゴム製のフタ |
排水弁 | ゴムフロートの下にある便器に水を流すための内部パーツ |
洗浄レバー | 水を流すための外部パーツ |
トイレの水が流れる仕組みは、以下のとおりです。
2:タンクから便器に流れ、流れ終わるとゴムフロートが自動的に閉まる
3:タンクの中の水が少なくなるとタンクの中で浮かぶ浮き玉が下がり、ボールタップから水が給水される
4:浮き玉が上昇し十分な水位まで溜まると、水の給水が止まる
トイレは、毎回洗浄レバーを回すたびに上記の仕組みによって水が流れています。トイレに何らかのトラブルが生じた場合は、上記のパーツや仕組みが原因の可能性が高いです。
築年数が古い建物で起こり得るトイレのトラブル
築年数が古い建物ではさまざまなトラブルが起こる可能性が高く、特に避けて通れない問題の一つがトイレのトラブルです。トイレは生活に欠かせない場所であるため、トイレに何らかのトラブルが起こるとクレームにもつながります。築年数が古い建物で起こり得るトラブルには、以下が挙げられます。
・水が流れない
・水漏れする
水が止まらない
トイレの水が止まらないと言っても、主に3つの症状パターンがあります。
・レバーで流した後に便器内で大量の水が流れ続ける
・タンク内で流れる給水の音が止まらない
手洗い金具から水が出続ける
手洗い金具からの水が止まらない場合、内部パーツの一つであるボールタップに問題が生じている可能性が高いです。ボールタップには、給水管からの水の供給を制御して水の量を調整する役割があります。しかしボールタップは消耗品のため、経年劣化により水が出続けるトラブルが発生するのです。
レバーで流した後に便器内で大量の水が流れ続ける
レバーで流した後に便器内で大量の水が流れ続ける場合も、ボールタップに何らかの不具合が発生している可能性があります。ただし、トイレには水位が一定の高さを超えると便器へ水を流すオーバーフロー管と呼ばれる部品がついているため、ボールタップが故障しても基本的に水が溢れることはありません。ボールタップだけでなく、洗浄レバーが故障し元に位置に戻らない不具合などでも水が流れ続けることがあります。
タンク内で流れる給水の音が止まらない
トイレタンクの中から少量の水が流れる音が聞こえる場合も、タンクの中で水が流れ続けている可能性が高いです。この場合も、ボールタップに不具合が生じ給水量の調整が制御できていなことが考えられます。水が目に見えなくて水漏れが生じていることもあるので、早めの処置が必要です。
水が流れない
トイレの水が流れない原因には、トイレタンクに水が溜まっていない、またはトイレタンクから便器に水が流れるまでのどこかに不具合が発生していることが考えられます。トイレタンクに水が溜まらない原因には、断水や止水栓の閉まり、ボールタップや浮き玉の不具合が大きな原因です。
トイレタンクに水が溜まっているにも関わらず水が流れない場合は、洗浄レバー・ボール他タップ・浮き玉・フロートバルブのいずれかに問題が生じている可能性があります。トイレタンクの内部パーツ以外の原因には、便器の奥や排水管の詰まりも考えられます。誤ってトイレットペーパー以外のものを流してしまうと詰まりやすいので注意しましょう。
水漏れする
基本的に、トイレにはタンクから便器へ水を流すオーバーフロー管がついているため便器から水が溢れることはありません。しかし、このオーバーフロー管に不具合が起きると上手く作動せず、水漏れすることがあります。オーバーフロー管だけでなく、管との接続部分のナットが緩んでいたりパッキンが劣化していたりなどの理由でも水漏れは発生します。
部品の不具合だけでなく、トイレタンク本体がひび割れているとそこから水が漏れる可能性も高いです。トイレタンクに使われている素材は陶器や樹脂がほとんどのため、過度な衝撃には耐えることができません。重いものをぶつけたり熱湯を入れたりなど、想定されていない負荷がかかることでひび割れが起き、そこから水漏れにつながります。
トイレトラブルに対する具体的な応急処置の方法
今回紹介した3つのトラブルは、すべて応急処置で一旦は直すことが可能です。いきなりトイレトラブルが起きても、修理業者がすぐに対応してくれるとは限りません。トラブルを放置するとトイレだけでなく建物全体の問題にもつながるため、応急処置で速やかに対処しましょう。
水が止まらない
トイレの水が止まらないときは、原因を調べてそれに合った応急処置を行いましょう。まずは無駄な水の消費を防ぐために、止水栓を閉めます。止水栓は、マイナスドライバーを使って閉めるタイプとハンドルを回して閉めるタイプの2種類があります。どちらのタイプも、時計回りに回すことで水を止めることが可能です。あとで開くときのために、何回回したかを把握しておきましょう。マイナスドライバーを使った止水栓の閉め方は、こちらを参考にしてください。
止水栓を閉めると、一旦水を止めることができます。水が止まったらトイレタンクのフタを開け、水位をチェックしましょう。オーバーフロー管に目安の水位線が書かれており、水位線よりも上に水がある場合はボールタップ・パッキン・浮き玉の不具合が考えられます。これらは自分で新しいものに交換できるため、不具合があるパーツが明らかであれば新しいものに変更することで応急処置となります。
オーバーフロー管の水位線よりも水が下にある場合、排水弁の劣化か洗浄レバーにつながる鎖が絡まっている可能性が高いです。鎖が絡まっていれば手で直し、絡まっていなければ排水弁の交換を行いましょう。排水弁は常に水に浸かっているため、他のパーツよりも劣化が早いのが特徴です。
水が出なくて流せない
トイレの水が流れない場合は、まずはバケツを使って水を流す応急処置を行いましょう。5〜6L程度の水を高い位置から便器に一気に流し入れ、さらに3〜4Lの水をゆっくり便器に入れて封水を溜めます。
詰まりが原因で水が流れない(排水できない)
水に溶けないティッシュペーパーや過剰にトイレットペーパーを使用すると、うまく排水ができず便器内で詰まる恐れがあります。
流れないからといってさらに水を流すと溢れて大惨事になりますので、ご注意ください。
このタイミングで修理業者に依頼すると費用が発生し、業者によっては法外な料金を請求される可能性もあります。詰まらないように使用するのが一番ですが、詰まってしまった場合を想定してスッポンと呼ばれる「ラバーカップ」を常備しておくと安心です。
ラバーカップを使用する際は、汚れても大丈夫なように便器の周りに新聞紙などを敷いておきましょう。便器内の排水口にラバーカップの口を密着させるよう意識して、根気よく何度も押し込むことで大抵の詰まりは解消されます。
頻繁に詰まりが起こる場合は、尿石や汚れが堆積している可能性があり、便器の交換を検討する時期かもしれません。ラバーカップには種類があるので、ホームセンター等でお問い合わせください。
トイレの詰まりを防ぐためには、生理用品や紙おむつなど吸水性の高い物は絶対に流してはいけません。配管内で膨張すると排水が完全に止まり、修理業者に依頼することになりますのでご注意ください。
水漏れする
トイレが水漏れした場合も、上記で紹介した方法で一旦止水栓を閉めます。水が止まったら、水が漏れている場所を特定しましょう。トイレの水漏れが起こりやすい場所は、以下の3つが挙げられます。
・給水管と分岐水栓の間
・止水栓の周辺
水漏れしている場所が特定できたら、ナットやパッキンの状態を確認してください。これらが緩んでいると水漏れが起こる可能性があるので、強く締め直すことで水漏れが直ることがあります。給水管自体に異常が起きている場合は、新しいものに変えることで水漏れが解消します。
トイレに使われているパーツの耐用年数
トイレ本体やトイレタンク、内部に使われているパーツは、時間が経つほど劣化していきます。経年劣化が起こった状態でトイレを使い続けるとトラブルが頻発してしまうため、部品ごとの耐用年数を知っておきましょう。
便器・タンク
便器やタンク自体は、陶器でできているものであれば100年はもつと言われています。ただし、地震や外部からの圧力などによって便器やタンクがひび割れすると、水漏れなどの原因となるため交換が必要です。
内部パーツ
トイレタンクの中にあるボールタップや排水弁などの各パーツは、約7〜10年が耐用年数の目安とされています。内部パーツは消耗品であり経年劣化は避けられないため、トイレトラブルが見つかったら早めに交換しましょう。
内部パーツは、メーカーでメンテナンス部品の製造が終わるとパーツだけの交換が難しくなります。メンテナンス部品の製造終了時期は生産終了後7年程度が目安のため、生産終了しているパーツのトイレを使っている場合は注意が必要です。
温水洗浄便座
ウォシュレットとも呼ばれる温水洗浄便座の耐用年数は、一般的に約7〜10年と言われています。使用してから5年を経過すると不具合が増えるため、7年以上使用していたり異常を頻繁に感じる場合はメンテナンスを行うのがおすすめです。
トイレトラブルの応急処置を行う際の注意点
トイレトラブルの応急処置を行う場合は、以下の3つのポイントに気をつけましょう。
・無理に応急処置を行わない
・トラブルが頻発したら買い替えを検討する
応急処置だけで終わらせない
今回紹介した応急処置は、あくまでも一時的に症状を改善する方法ばかりです。応急処置では根本的なトラブルの改善にならないため、すぐに専門の業者にメンテナンスや修理を依頼しましょう。素人では判断できない重大な問題が隠れているかもしれません。
無理に応急処置を行わない
応急処置を無理やり行うと、別の部分に不具合が起こる可能性も考えられます。無理な対応をするとトイレ本体にひびが入り本体ごと交換しなければいけないこともあるので、無理に応急処置を行うことは避けましょう。
トラブルが頻発したら買い替えを検討する
応急処置を施してもトラブルが頻発する場合、トイレやパーツの寿命かもしれません。一度にたくさんのパーツが寿命を迎えると、パーツ交換や修理ではなく買い替えが安くなることもあります。修理か買い替えか迷った場合は、専門の業者に相談しましょう。
まとめ
トイレにはさまざまなトラブルが起こることがありますが、今回紹介した3つのトラブルであれば応急処置で対処することが可能です。症状や原因をしっかり把握し、正しい手順で応急処置を行いましょう。
ただし、応急処置はあくまでも一時的なものであり、根本的な原因を改善するものではありません。応急処置が完了した後は、必ず専門の業者にトイレの状態を見てもらいましょう。「日本中央住販カスタマーサービス」では、トイレだけでなく建物のさまざまなトラブルに対応しています。建物のお困りごとが生じたら、お気軽にお問い合わせください。