女性が取得しているイメージを持っている方も多いですが、近年では男性も子育てに参加している家庭も多い「産後育休」。
令和4年度の男女別育児休暇の取得率は、女性が80%である一方で男性の取得率は17%とかなり低い数値となっています。
そのため、産後パパ育休を取るにも「取得したいけど制度がわからない」、「会社へ相談してもいいのか」と悩みを抱えている方も多いでしょう。
本記事では仕事と育児を両立できる産後パパ育休制度の基礎知識から、受けられるサポートやメリット、必要な準備までを解説します。
育休の取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
産後パパ育休とは
産後パパ育休とは「出生時育児休業」という、2022年10月に「育児・介護休業法」の改正により作られたものです。
通常の育児休業制度とは別に、男性の育児休業を促進させるための制度となっています。
産後パパ育休の内容は、産後から8週間までに最長4週間の休業を取得できるほかに、2回に分割して休暇の申請が行えます。
たとえば1回目の休業期間は里帰り出産に立ち会い一旦職場へ復帰して、その後自宅で育児する頃にまた取得するという方法もおすすめです。
さらに、産後パパ育休制度は休業中も就業できるのが魅力。
通常の「育児休業制度」の場合、休業中の就業は原則で不可となっています。しかし産後パパ制度であれは労使協定を結んでいる場合に限り、労働者が合意の範囲で就業可能です。
さらに出産予定の申し出に対して育休制度の個別説明と従業員が1,000人を超える企業は「育休取得状況」を公開する義務があり、男性が育休を取得しやすい環境となっています。
空いた時間に仕事ができるため、仕事と育児の両立がしやすい制度といえるでしょう。
パパ育休で得られるサポート
育休で得られるサポートは経済的な支援が1番大きく、育児休業給付金を取得できるため、収入面での不安も少なくできます。ここでは、パパ育休を受けて得られる給付金やサポートについて紹介します。
給付金額の計算方法は、以下の通りです。
しかし産後パパ育休期間中に会社に出勤し、事業主から賃金が支払われた場合は賃金額に応じて支給額が調整されます。
さらに2022年から3歳に満たない子を療養するための育児休業期間は、事業主が「育児休業等取得者申請書」を提出すると社会保険料のうち健康保険、厚生年金保険の保険料が事業主分と被保険者分が免除されます。
このようなサポートを積極的に活用すれば、経済的な負担を少しでも減らせるでしょう。
産後パパ育休と育休は制度が異なる
産後パパ育休と通常の育休の大きな違いは、労使協定によって労働者の合意の範囲で就業できることです。
通常の育児休業期間中の就業は原則不可ですが、産後パパ育休は空いた時間を就業にあてられます。
そのほかに、休業期間も違い育児休業はお子さんが1歳まで取得できますが、保育園が見つからなかったなどの理由がある場合、2歳になるまで延長できます。
下記に産後パパ育休と育児休業制度の違いを表で解説しますので、参考にしてください。
産後パパ育休 | 育児休業制度 | |
対象期間と取得可能日数 | 出生後8週間以内に4週まで可 | 原則子供が1歳まで
(最長2歳まで) |
申出期限 | 原則休業の2週間前 | 原則1ヶ月前 |
分割取得 | 分割して2回まで可能
(初めにまとめて申し出が必要) |
分割して2回まで可能
(取得の際にそれぞれ申出) |
休業中の就業 | 労使協定を結んでいる場合に限り、
労働者が合意した範囲で可能 |
原則不可 |
参照:厚生労働省ホームページ
産後パパ育休とパパママ育休プラスの違い
パパママ育休プラスとは2010年から始まった制度で、両親がともに育児休業を取得する場合は子供が1歳2ヶ月になるまで延長できます。
要件は下記の3点です。
- 配偶者は子が1歳に達するまでに育児休業を取得している
- 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日前後である
- 本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日である。
パパママ育休プラスがとれる期間は、最大でお子さんが1歳になるまでと決まっています。
また両親共に育児休暇を延長できるわけではなく、母親の仕事復帰に合わせて父親が残りの2ヶ月を育児休業取得する場合は可能です。
さらに、産後パパ育休とパパママ育休プラスの違いは下記の表の通りです。
産後パパ育休 | パパママ育休プラス | |
対象期間 | 出生後8週間以内に4週まで可 | 子が1歳2ヶ月まで |
申請期限 | 原則休業の2週間前 | 子が1歳に達する日までの育児休業給付金の支給対象期間内 |
分割取得 | 分割して2回まで可能 | 分割して2回まで可能 |
子供が1歳に達する日は誕生日ではなく前日までとなるので、申請する場合は注意しましょう。
産後パパ育休のメリット4選
男性の育休取得は従業員の負担軽減だけではなく、近年では企業のイメージアップにもなります。
育児とお仕事を両立させやすい産後パパ育休制度のメリットは、以下の4つです。
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- 時短勤務の処置が行われる
- 子供の看護休暇制度が取得できる
- 時間外労働・残業。深夜業が制限される
- 産後パパ育休中のハラスメント防止措置が行われる
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では、順番に解説します。
1.時短勤務の措置が行われる
労働時間の短縮はお仕事をしながらの育児には大切で、積極的に導入している企業も増えています。
育児休暇は仕事を休み、育児に専念する目的の休暇となっていますが、産後パパ育休は労使協定を結べば同意の範囲内で就業可能です。
また、産後パパ育休で就業する場合は、下記3点をすべて満たさなければいけません。
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- 休業中の所定労働日数の半分以下
- 休業中の所定労働時間の半分以下
- 休業開始日と終了日はその日の所定労働時間未満
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たとえば、やむを得ない事情で育児休業中の従業員の対応が必要な場合など、緊急時に勤務するなどです。
基本的に事業主は産後パパ育休中の従業員へ就業を働きかけてはいけないため、お仕事と育児のバランスがとれる制度になっています。
2.子供の看護休暇制度が取得できる
産後パパ育休の期間中にも子供の看護休暇制度は利用できます。
子供の看護休暇制度とは、突然の病気やけがのときに親が子供を看護するための制度で、小学校就業前の子供を養育している従業員が、有給休暇とは別に取得できるのが特徴です。
子供1人につき原則で年間5日取ることが可能です。
就業中に急にお子さんを看護する場合は、基本的に労働は免除されますが、賃金の支払いについては義務がありません。
具体的な条件や手続きについては勤務している企業によって異なるため、事前に確認するのがおすすめです。
3.時間外労働・残業。深夜業が制限される
産後パパ育休の期間は基本的に労働時間が制限されており、残業や深夜業は発生しません。
休業期間中に就業が発生するときは、所定労働日と所定労働時間の半分までと決まっています。
また深夜業についても、通常の育児休業制度と同じく午後10時から午前5時までの労働は免除されます。
産後パパ育休期間が終了してからも残業については、3歳に満たない子供を養育している従業員は企業へ請求し、条件を満たせば残業の拒否も可能です。
さらに小学校に入学前の子供がいる場合は月に24時間、年間150時間以上の労働はいけないので、仕事と育児の両立が不安な方は企業へ相談しましょう。
4.産後パパ育休中のハラスメント防止措置が行われる
近年では男性の育休を国が推進しているものの、取得率が17%とあまり浸透していないのが現実です。
さらに男性が育児のための時短勤務や育休を取得する際に不利益な扱いを受ける「パタハラ」もあります。
しかし、産後パパ育休は改正育児・介護休業法で休暇取得の自由が認められている権利で、企業は仕事と育児を両立できるようにサポートしなければいけません。
男性社員が積極的に育休を取得すれば社内の風土が変わり育児への理解が広がるため、組織の意識改革やハラスメント予防には効果的です。
そのほか、男性の育休を推進している企業は会社のイメージアップにもなるので、従業員のモチベーション向上に期待できるでしょう。
産後パパ育休は出産予定日前でも取得できる
男性の育児休業は基本的に配偶者の出産予定日もしくは、子供の出生日から休業を取得できますが、予定日と出産日が異なるのは珍しくありません。
出産予定日よりも早めに子供が生まれた場合は、開始日の1週間前までに企業へ申請すると休みを繰り上げられます。
産後パパ育休は子供の出生日から休業期間になるので、出産予定日から3日早く生まれた場合は3日繰り上げた日から最大で4週間の取得が可能です。
そのため育休取得については早めに企業側と相談して、予期しない事態が起きたときにも柔軟に対応できるようにしましょう。
産後パパ育休を取得するための準備3選
2022年から始まった産後パパ育休ですが、就業規則や必要な書類、対応窓口の部署など環境が整備されている企業も増えています。
ここでは、効率的に産後パパ育休を取得するための準備3選を下記に紹介します。
- 人事担当者に確認する
- 上司へ相談する
- 同僚へ報告し、引き継ぎを行う
取得を検討している方はぜひ、参考にしてください。
1.人事担当者に確認する
産後パパ育休を取得希望の従業員は、原則として2週間前までに企業側へ「育児休業申出書」を提出する必要があります。
企業側は育児休業の期間と「育児休業給付金」の受給申請や社会保険免除にもなりますので、人事担当者へは必ず相談してください。
さらに産後パパ育休の場合、労使協定を結び休業期間中も就労できるのが特徴です。
就労などの一定の措置を取る場合は1ヶ月前までにできるため、人事担当者への相談は早めに済ませる必要があります。
最大で4週間の休業期間中ですが、業種によっては臨時で人員補充が可能です。
たとえば小売業や製造業など一部作業の難易度が高くない業務の場合は、臨時募集や系列会社からの応援というかたちで人手不足を解消できます。
そのほかシフトを調整して定時よりも早く帰れる日を作るなど、残業時間の削減は企業の課題です。
人員の配置など従業員が業務を円滑に進めるためには、早めに人事担当者へ早めに相談しましょう。
2.上司に相談する
育休取得は上司への早い報告がおすすめです。
場合によってはどのような人材が他部門や関連会社から必要なのか、人事担当者や上司と相談する可能性もあり、申請期限よりも早めに相談すると上司側の準備も進めやすくなるでしょう。
近年では男性の育休が推進されているので、相談後に速やかに育休の提案をしてくれる場合もあります。
希望取得日と合わせて今後の見通しなどもしっかりと伝えておくと、上司の理解や協力をより得られやすくなります。
3.同僚へ報告し、引き継ぎを行う
育休に入る準備として同僚への引き継ぎも大切です。
出産予定日から出生日が遅れる場合もあれば、早めに繰り上げて育休に入る可能性もあるため、同僚への引き継ぎは事前に細かく伝えます。
業務内容によっては担当者しかわからない内容のものもあるので、代理スタッフに早めに伝えておくのがおすすめです。
産後パパ育休制度は育児に専念できる制度となっているため、突然の仕事が発生して育児に支障をきたさないようにしっかりと同僚に引き継ぎましょう。
2022年からは育児休業の分割取得が可能に
2022年10月に「育児・介護休業法」が改正されて男女問わず育休が取得しやすくなったうえ、今までは分割では取得できなかったのが2回まで可能になりました。
産後パパ育休制度も分割で取得できますが、大きな違いは分割を会社へ申し出るタイミングです。
産後パパ育休と育児休業制度の違いは以下の通りです。
産後パパ育休 | 育児休業制度 | |
対象期間と取得可能日数 | 出生後8週間以内に4週まで可 | 原則子供が1歳まで
(最長2歳まで) |
申出期限 | 原則休業の2週間前 | 原則1ヶ月前 |
分割取得 | 分割して2回まで可能
(初めにまとめて申し出が必要) |
分割して2回まで可能
(取得の際にそれぞれ申出) |
休業中の就業 | 労使協定を結んでいる場合に限り、
労働者が合意した範囲で可能 |
原則不可 |
産後パパ育休育児休暇制度をうまく組み合わせると、男性は最大4回までの分割取得が可能になるので、家庭と職場の事情に合わせて育児休業の取得時期を調整しやすくなるでしょう
「育児休業給付金」も2回に分けて取得できますが、申請は1回にまとめて行うため注意しましょう。
まとめ
産後パパ育休制度は「育児休業給付金」といった経済的な支援のほかに社会保険料の一部免除などさまざまなメリットがあります。
夫婦の負担が軽減され子供と過ごす大切な時間が増やせるため、積極的に活用していきましょう。
日本中央住販では育休に関して積極的なサポートを行っており、どのようなトラブルでも安心して相談できる環境が整っています。
実際に育休を取得した方のレポートもあるので、こちらも合わせてぜひ参考にしてくださいね。