「不動産の仕事にはなんの資格が必要なのだろう」
「資格がないと不動産の仕事はできない?」
このような悩みを抱えている方は多いでしょう。不動産業といえば「宅建」と呼ばれる宅地建物取引士の資格が必要というイメージがある方も多いですよね。
しかし宅建以外にも不動産にまつわる資格はさまざまな種類があり、取得しておくと仕事に活かせるものも多いです。
本記事では不動産業界の就職を希望している方に向けて、必要な資格や難易度を紹介します。
不動産の仕事に必要な資格を知ることで就職や転職にも役立つので、ぜひ参考にしてください。
不動産は仕事によって資格なしでできるものもある
不動産は仕事によっては資格を持っていなくてもできるものもあります。たとえば、物件の案内や紹介をする賃貸業であれば、宅建士の資格を所持していなくても業務が可能です。
自身の所持している賃貸を貸す場合、宅建士の免許は不要です。しかし他人の有する物件の賃貸借を行う場合には、契約を結ぶ際の重要事項の説明などが必要となるため、宅建の免許が必須となります。
また不動産会社では、1つの事務所につき5人に1人の割合で宅建士を配置させなければなりません。
多くの不動産会社では賃貸業や売買取引、物件管理の業務を行っており宅建士の資格が必要になる場合が多いです。
しかし5人に1人が宅建士の資格を持っていれば問題ないため、事務などであれば未経験で資格がなくても仕事は可能です。
不動産仲介業では宅地建物取引士の資格が必要
不動産仲介業では宅地建物取引士の資格が必要になります。
宅建業の免許なしでは宅建業を営むことはできません。
不動産仲介業は不動産を売買したり賃貸として貸したりする際に、仲介役として売買契約や賃貸契約の業務を行います。
契約の中には重要事項の説明や重要事項説明書への記名、押印などの業務は宅建士にしかできない独占業務も含まれます。
また仲介不動産は開業時に、設立した営業所の中に5人に1人は専任の宅建士が必要です。
さらに設立会社が宅地建物取引業法に規定されている国土交通大臣、または都道府県の免許の取得が必要となります。
不動産関連の資格を得るメリット3選
不動産業は資格を持っていなくても業務はできますが、不動産関連の資格を持つメリットは大きいといえるでしょう。具体的なメリットは以下の3点です。
- 就職や転職に役立つ
- 独立する時に役立つ
- 顧客との信頼関係が得やすくなる
では、順番に解説します。
1.就職や転職に役立つ
不動産関連の資格を持っていると就職や転職に役立ちます。
不動産に関する知識や法律は難しいものが多く、求人を出している企業は有資格者を歓迎しているところが多いです。
たとえばマンション管理士であればマンションの管理組合にアドバイスやサポートをするので、需要があります。
さらに資格を持っていると資格手当をつけてくれる企業もあるため、取得しておいて損はないでしょう。
このように不動産関連に関する資格を持っていると就職や転職に有利に働くでしょう。
2.独立する時に役立つ
不動産関連の資格を持っていると独立する時に便利です。
資格をいくつか所持しておくと独立時にさまざまな業務を行えるため、仕事の幅が広がり専門性を高められるでしょう。
とくに宅建士の資格を取得しておけば、独立時に不動産業の専任の宅建士を雇う必要がなくなるのもポイントです。
さらにマンション管理士や不動産鑑定士などの資格を持っていれば、物件の管理や土地の経済的価値を判定できるようになり、さらに業務に活用できます。
ほかにも不動産関連の資格と合わせて社労士や行政書士の国家資格を持っていると、独立時に必要な人事労務管理のサポートや、官公庁へ提出する書類作成手続きを行えるのでより会社の運営がしやすくなるでしょう。
3.顧客との信頼関係が得やすくなる
自分の生活に関わる大切な住居の契約や売買をするのに、無資格より不動産関連の資格を持っていれば顧客からの信頼は得やすくなるでしょう。
商談や内見の案内といった基本的な仲介営業は免許がなくてもできますが、相談する人の中には資格を持っている方に相談したいという方もいます。
宅建士の資格を所持していれば不動産に関する知識や法律、税金について幅広い知識を持っているので顧客からすると安心して物件の相談ができます。
ほかにもファイナンシャルプランナーの資格があれば、不動産売買の資金面に関するアドバイスができるため、顧客の不安も解消しやすくなるでしょう。
不動産資格の3冠とは
不動産業において不動産資格の3冠とは、以下の3つです。
- 宅地建物取引士
- マンション管理士
- 管理業務主任者
ほかの資格とはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、それぞれの資格の特徴についてご紹介します。
1.宅地建物取引士
不動産業で仕事をするにあたって基本となる資格が「宅建」や「宅建士」など略称で呼ばれる「宅地建物取引士」の資格です。
宅地建物取引士しかできない独占業務が下記3つあります。
- 重要事項説明書面の内容説明
- 重要事項説明書面への記名・押印
- 37条書面への記名・押印
上記の3つは不動産仲介業において顧客との契約時に必要な業務になるため、契約を締結する場合は宅地建物取引士の資格を所有していないと契約ができません。
宅地建物取引士は国家資格で合格率も15〜17%と低く難易度も高いですが、持っていると会社でのキャリアアップにつながったり、資格手当金が支給されたりします。
そのため合格すれば一生有効な資格といえるでしょう。
ただし合格しても宅建士になるには、不動産業の実務経験が2年以上必要です。
試験に合格した後に受験した都道府県へ宅建士証の交付申請をすると宅建士になれます。
実務経験がない場合や実務経験が2年未満の場合は、登録実務講習を受講して合格することで必要条件を満たせます。
近年の宅地建物取引士の合格率は、以下の表の通りです。
実施年度 | 合格率 |
令和4年度 | 17.0% |
令和5年度 | 17.2% |
2.マンション管理士
マンション管理士はマンション管理業務のサポートをするための資格です。
マンションの管理組合は住民が運営をしていることが多く、マンション管理士は管理組合に対して専門知識を持った立場からアドバイザーとしてサポートを行います。
仕事内容はマンションの管理費や修繕積立金の管理のコンサルティング、住民トラブルの解決など多岐にわたります。さまざまな分野の業務を行うのでキャリアアップにもつながりやすいです。
試験範囲はマンションの構造や設備、民法や借地借家法まで広範囲で難易度が高い国家資格でもあります。
合格率は10%未満と、ほかの不動産関係の資格と比べても取得が難しい資格といえるでしょう。
マンション管理の業務は住民とのコミュニケーションで信頼を得やすく、感謝の言葉をもらえたりやりがいを感じたりできる仕事です。
近年は新築マンションの建築も増加していることから、マンション管理士の資格を持った人材の需要も高まるでしょう。
近年のマンション管理士の合格率は、以下の表の通りです。
実施年度 | 合格率 |
令和4年度 | 11.5% |
令和5年度 | 10.1% |
3.管理業務主任者
管理業務主任者とは、マンション管理業を始める際に必須となる国家資格です。
主な業務としては、管理委託契約時の重要事項の説明や契約書に関わる仕事を取り扱います。
基本的にマンション管理会社には事務所ごとに管理業務主任者1人の設置義務があります。
また資格手当を支給している会社も多いため、スキルアップにもつながりやすい資格です。
管理業務主任者の合格率は毎年20%前後なので、難易度は高いですが宅建士やマンション管理士の資格と比較すると合格しやすい国家資格といえるでしょう。
近年の管理業務主任者の合格率は、以下の表の通りです。
実施年度 | 合格率 |
令和4年度 | 18.9% |
令和5年度 | 21.9% |
持っておくと役立つ不動産に関する資格5選
宅建以外にも不動産に関する資格は多くありますが、その中でも持っておくと不動産業に役立つ資格は以下の5つです。
- 賃貸不動産経営管理士
- 不動産鑑定士
- ファイナンシャルプランナー
- 土地家屋調査士
- 住宅ローンアドバイザー
ここからは、それぞれの資格の特徴や合格率について解説します。
1.賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産経営管理士とは賃貸不動産管理業法で定められた業務管理者となる国家資格です。
幅広い知識や技能、倫理観を持つことで不動産トラブルを解決することが期待されます。
トラブルには大家が高齢で所有物件の管理ができていないものや、相続として引き継いだ物件があるものの管理ができないといった事例などがあります。
そのため賃貸住宅管理会社に所有物件の管理を任せるといったことも増加しており、宅建と同じくらい実用性のある資格です。
2021年からは「賃貸住宅の管理業務等の純正化に関する法律」において国交省令で国家資格となっています。
賃貸不動産経営管理士の2023年度の合格率は28.2%と、低い傾向にあります。
難易度はやや高めですが200戸以上の賃貸住宅管理業を営む会社は、事務所や営業所ごとに賃貸不動産経営管理士を1名以上設置する義務があるので、資格を持っていると役立つでしょう。
2.不動産鑑定士
不動産鑑定士は土地や建物を鑑定して適正な価値を定める資格です。
土地の価値を判断するために建物や土地の現地調査を行ったり、役所や法務局をまわって各種権利の確認をしたりするので、多くの専門知識を必要とします。
そのため、取得しても損はない資格といえるでしょう。
試験は2段階の選抜方式で実施されますが、1段階目は短答式試験が全国規模で実施されるので誰でも受験できます。短答式試験の合格率は32〜36%ほどです。
2段階目の論文式試験は短答式試験の合格者が受験できるようになっています。合格率は14〜16%と難易度が高いです。
この短答式試験と論文式試験の2段階をクリアし、試験合格後の研修を修了すると不動産鑑定士の資格を取得できます。
3.ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは通称「FP」と呼ばれている金融業界では有名な資格です。
お金に関する専門知識を有するので、顧客に合わせたライフプランの提案や資金のプランニングができます。
不動産売買においてFPの資格を持っていると資金やローンなどのアドバイスができ、顧客からは安心と信頼を得やすいでしょう。
FPの試験は学科と実技に分かれており両方の試験の合格が必要です。
FP2級の合格率は25〜30%程度と難易度は高めですが、FP3級であれば合格率は約70%程度と高いので、国家資格の中でも難易度は低めとなっています。
2級試験の受験資格は3級試験に合格しているか、金融機関に勤務しているなどFPに関する実務経験が2年以上あると受けられます。
不動産業務に活用するなら2級を取得しておくとよいでしょう。
4.土地家屋調査士
不動産登記の専門家である土地家屋調査士は、土地の境界と用途を確認し土地面積の登記を代理で行える資格です。
同様に土地の測量調査を行っている「測量士」との違いは登記ができるかどうかです。
所有している土地で建物を建設したり壊したりなど用途の変更がある場合は、登記内容を必ず申請しなければなりません。
しかし申請内容は複雑なため、土地家屋調査士に代理申請をしてもらうのが一般的です。
また不動産表示に関する登記は土地家屋調査士の独占業務になるので、需要が高い資格だといえます。取得しておくと今後独立開業や転職でも役立つでしょう。
土地家屋調査士は非常に難関な国家資格で試験合格率は8〜9%です。
測量士や測量士補、一級または二級建築士の試験に合格していれば一部試験内容が免除されます。
5.住宅ローンアドバイザー
住宅ローンアドバイザーとは住宅ローンに関する専門家で、公正な立場で顧客にアドバイスや情報提供を行います。
不動産は高額な買い物のため、購入する際に住宅ローンを組む方が多いです。
金融機関ではさまざまな住宅ローンの商品が扱われており、自分に合うローンを決めることは難しいといわれています。
住宅ローンアドバイザーであれば顧客に合うローン選びをアドバイスし、サポートできるので不動産業において持っていると役立つ資格です。
住宅ローンアドバイザーの資格を取得するためには、養成講座の受講と認定試験の2つの方法があります。養成講座は基礎編と応用編の2つを受講し、応用編の効果測定に合格した後に登録を受けて取得する方法です。
認定試験は金融検定協会が実施しており、認定試験に合格すれば住宅ローンアドバイザーになれます。
資格取得後は3年後ごとの更新が必要なので、継続して住宅ローン商品や法律について勉強しておくことは必要でしょう。
認定試験の合格率は公表されていないですが、住宅ローンアドバイザー養成講座の受講率、修了率は80%以上と高めのため、難易度はそれほど高くないといえます。
不動産は未経験からでも挑戦できる
不動産は営業職などであれば未経験からでも挑戦できる業界ですが、お客様に満足してもらうためにはある程度の専門知識は必要となります。
住宅に関する知識を身につけ、顧客のニーズに合う物件が紹介できれば自分の成果にもなるでしょう。
不動産営業はインセンティブが高いといわれており、やればやるだけ報酬につながる仕事です。
顧客やさまざまな業者とも関わりを持つので、コミュニケーションが得意な方には向いているでしょう。
さらに不動産業で経験を積みながら宅建士などの専門知識がある資格を取得できれば、自分のスキルアップにもつながります。
資格があれば不動産業界でも幅広い業務で活躍できるでしょう。
まとめ
不動産の仕事は資格がなくてもできるので、年代問わず挑戦しやすい業界です。
とくに賃貸業や不動産営業は報酬型が多く、自分の成果が報酬に直結するためやりがいにもなります。
未経験で資格がなくても挑戦しやすい業界ですが、不動産資格の3冠といわれる宅地建物取引士やマンション管理士、管理業務主任者の資格を持っていると役立つでしょう。
需要が高い資格でもあるので、業務の幅が広がり自身のスキルアップにもつながります。